ハーメルン
黄金船の長い旅路 或いは 悲劇を幸せにしたい少女の頑張り 【改訂版】
9 デート

「ということで、イクノと買い物に行ってくるから」
「デートですね」
「ちげーし」

 単に靴を買いに行くだけである。
 足に合った靴を使うのも脚に負担を掛けない方法のひとつであり、イクノディクタスの靴はあまりあっていないように見えたので買いなおす予定だった。

「私のイクノさんがNTR(ナリタトップロード)ましたわ!!」
「いろいろツッコミどころしかねーんだが、そもそもお前がちゃんと宿題やらないのがわりーんだろ!!」
「ですわっ!!」

 当初はマックイーンと3人で出かける予定だったが、マックイーンが宿題をためているのが発覚し、罰として終わるまでお出かけ禁止にしたのだ。
 単純にマックイーンが悪いのだが、マックイーンは不満そうにバランスボールの上をぽよんぽよんしている。

「……」すすすっ、ぴとっ
「ああああああ!!!!」
「イクノもあまりからかうなよ」

 そんなマックイーンを見て、イクノディクタスはゴールドシップの腕に抱き着いた。
 それを見たマックイーンが涙目でゴールドシップを睨んでいて少しかわいそうになってくるが、とはいえ原因はマックイーンなのでゴールドシップも予定を変更するつもりはない。

「マックイーンさんが、表情をコロコロ変えるのが面白くてつい」
「案外性格悪いな」

 ゴールドシップがそういうと、イクノディクタスは薄っすらと微笑んだ。





「ゴールドシップさんとマックイーンさんって、仲が良いのですね」
「え、普通じゃね?」

 靴屋に到着後、二人で靴を選んでいると、イクノがそんな話をし始めた。
 ゴールドシップとしては特別仲がいいという自覚はない。トレーナーと担当としては仲がいいとは思うが……

「マックイーンさんは、クラスでは上品で表情も出しませんし、よく言えば高嶺の花、悪く言うと少し浮いているのです。部屋でもあまり話しませんし」
「へー、そうなのか」
「でも、トレーナー室では表情をコロコロ変えますし、素で生活しているように思います。ですから、ゴールドシップさんと仲がいいんだろうなって」

 確かに、ゴールドシップは日常のマックイーンを知らない。
 スイーツに目を輝かせ、走るのが好きで、結構甘えん坊な印象を抱いているが、それが外でも同じとは限らないのは確かだろう。

「アタシとしては、マックちゃんとイクノがずいぶん仲がいいのかと思っていたけどな」
「そうですか?」
「だってマックちゃんの話に結構イクノが出てくるし、すげー仲がいいのかと思ってたぜ」
「部屋でもあまり話さないのですが……」
「緊張してるのかもな。マックちゃん、結構人見知りそうだし…… よし、これでどうだ?」

 話しながら靴の中敷き調整をしていたゴールドシップが、できたものをイクノディクタスに渡す。

「ちょっと足の外側がきついですね」
「それでいいんだよ。イクノは結構O脚で、それが脚の負担につながってるからな。補正のために内側に傾きやすくしてるんだ。慣れるまで結構違和感があると思うが我慢してくれ。あまりきつそうなら止めるが」
「わかりました、しばらくは頑張ってみます」

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