ハーメルン
黄金船の長い旅路 或いは 悲劇を幸せにしたい少女の頑張り 【改訂版】
3 過去との出会い
ゴールドシップとジャスタウェイの卒業旅行は、北海道になった。
メジロの屋敷を使った複合施設、レイクヴィラトレーニングセンターは北海道にあったし、スペシャルウィークの所在も北海道だということをジャスタウェイが調べ上げたためである。
「でもよ、アポなし訪問って大丈夫なのかよ」
「だって今の連絡先分からなかったし。まあ大丈夫でしょう」
現在北海道の中でもかなり辺鄙なところにある、スペシャルウィークがいるという牧場へ向かって移動中である。
所在が分かった後、ジャスタウェイは連絡を取ろうとしたのだが、公開されていた牧場の連絡先はすべて不通になっていた。そのため、アポなしでの訪問である。若さゆえの無謀な行動であった。
最寄り駅まで電車で移動したら、あとはタクシーで移動することになった。
ウマ娘とはいえ、さすがに10km単位の距離を徒歩移動は厳しい。幸い駅のところに書いてある電話番号に連絡したら、すぐにタクシーが訪れた。
「ティナさんの牧場にお客さんとは、キミたちもスぺちゃんの知り合いなのかい?」
「ええ、私たち自身は知り合いではないのですが、祖母がスペシャルウィークさんと知り合いでして。ちょっと様子を見に行ってほしいと頼まれたものですから」
あまり乗り気でない態度をとっていたゴールドシップだったが、タクシーの運転手との雑談は積極的に対応していた。すべて嘘とも言い切れない言い訳を言いつつ、タクシーの運転手から情報を得ていく。
問題児かつ破天荒なゴールドシップであるが、おとなしく座って話している姿は名家のお嬢様のようであり、タクシーの運転手もその外面に騙されているようだった。
「ティナさんが火事で亡くなってから、スぺちゃんを外で見ることもなくなってね。時々ヘイローさんところの人が様子を見に来てるみたいなんだけど」
「そうなんですか」
田舎となると来客の有無もバレバレらしい。
自分たちの訪問も噂になるんだろうな、とゴールドシップは思いながら雑談を続ける。
スペシャルウィークが幼いころから育った牧場で今は一人暮らしをしていること、育ての母は火事で亡くなっていること、牧場自体も今は全く経営されていないこと、といった情報を得られたが、それ以上のめぼしい情報は特に得られなかった。
スペシャルウィークの住んでいる牧場は本当に辺鄙な場所であった。
タクシーを呼んでもいつ来るかわからないので、同じタクシーに帰りも乗るから待っていてくれとお願いし、二人は牧場の前で降りた。
牧場は荒れ果てていた。枝は伸び放題。雑草は生え放題。廃墟としか見えない門をくぐり、けもの道のようになった道を進むと、奥に朽ちかけた建物が存在した。
右手に見えた牛舎は焼け落ちていて、再建もされていないようである。
こんなところに本当に人が住んでいるのか。疑問に思った二人だが、ここまで来たのだからと朽ちかけた母屋へと向かう。
母屋に近づくと、縁側に老婆が座っているのを見つける。きっと彼女がスペシャルウィークだろう。
挨拶するために二人が近づくと、スペシャルウィークは驚いた表情を浮かべた。
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