番外編 ルビーは見た!
私は転生者。
前世の名前を天童寺さりな、今世の名前を聖瑠美衣
推しのアイドル・アイの子供に生まれ変わって、同じく転生し、兄になった前世の恩人とイチャイチャしながら幸せに暮らしている。
ここまでだったら全てが完璧だった。
だが、私達が生まれている以上、当たり前だけどアイに男が存在してしまっていたのだ。
「おら!クソガキども、俺の給料の味を精々噛み締めるがいい!テメェもだアイドルモドキ!というかそもそもマジでお前らとっとと出てけよ!」
「あら、このエスカルゴ美味しい!!マネージャーの手作り?」
「夜飯に電電虫出してる時点で何かおかしいと思わないのか!?アイ!ルビー!」
「ほーら、吾郎、でんでん虫でちゅよー。食べましょうねー」
「ちょ、ふざけんなクソ親父!!」
それがこの男、聖正宗だ。その光属性の名前の割に性格はドブカスを通り越して唯のカス、かと思いきやそれも通り越して何故か一緒にいると人生に退屈しない不思議な人物だ。
最初こそアイを汚したことやその荒すぎる言葉使いにより好感度は最低だったが前世からの知り合いだったらしいお兄ちゃんの説明を聞き、あの人が未だに清い身のままで、私達の戸籍の為に偽装結婚し別の男の子供である私達に割とまともな教育を施している事を知ったのだ。
その時点では、私の立場はアイよりのニュートラルと言った所だろうか。まぁアイに気を向けられている事以外に文句の言いようが無い人物だったので致し方無いと言えよう。
その後、襲われたり撃たれたりなんやかんやして(圧縮言語)、私はこの人を父親と認めたのだ。
「パパ!私にも食べさせて!」
「へいへいお嬢様、てか嫌がらせのつもりで作ったのになんで女性陣は喜んで食べてるんですかね」
因みに余談だがこの男の料理は馬鹿みたいに美味しい。いつもいつも私達居候軍団に嫌がらせする為に変な食材で料理を作るのだがその意味不明な腕(片腕)のせいで嫌がらせの体をなしていないのだ。効いてるのはお兄ちゃんだけである。
「マネージャー、私にもアーンして?」
「寝言は寝て言え!21才児!」
「じゃあマネージャーのフォーク使っちゃ、むぐ!…美味しい」
男が爆速でカタツムリを大人気アイドルの口に突っ込んだ。
改めて酷い絵面である。
「美味かったならサインくれませんかね、アイドル様。ほらここの名前の欄に」
「〜♪」
「離婚届で口拭くんじゃねえこのゴミクズヒモアイドル!」
離婚届(152枚目)はアイドルのちり紙に変わってカタツムリの体液をふんだんに吸った。
…ほんと、一日も退屈しないな。
この家に生まれる事ができてよかったと心の底から思えた。
▲
そんな幸せな日々の中でも特に楽しみにしている事がある。
パパとママの恋愛模様だ。結婚してるし、指輪もつけてるし、子供もいて親としての役割も完璧に果たしているにも関わらず、パパは童貞であった。
というかママの誘惑を九年間も跳ね除け続けるとか一体全体どんな精神構造をしてるのかさっぱり分からない。
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