R.I.P Goro
ある医者の日記───。
「ダチが推しと結婚しとった」
「そして推しが妊娠しとった」
「しかもその友達は自分の交友関係の中でもぶっちぎりの屑だ」
「さりなちゃんごめんな、俺のダチのクズのせいで…」
日記はここで途切れている
▲
俺は妊娠したアイを連れて宮崎にいる腐れ縁の医者のダチの所を訪ねていた。
「よお、ドルオタドクター、今日もその莫大な金をドブに捨ててるか?」
「なんだ、拝金主義者。生憎、俺はお前とは違って"アイ"に生きてるからな。いつかお前にも教えてやろう。で、何の用だ」
「単刀直入に言おう。口止め料は払うから極秘出産させて欲しい、お前なら人柄も割れてるから信用できる。金額は───くらいまでなら出せる。それ以上は要交渉だ」
「なんだ、遂にそのヤバい女運を拗らせて誰か孕ませたのか?」
「違う、俺はまだ童貞だ。…妊婦は仕事で使ってる女だ、一応俺の管轄だからその後始末をしなきゃならんのよ」
「そうか、相変わらず仕事には真摯だな。で、その子が?」
「ああ、そうだ。そら、帽子とって挨拶しろ」
「はーい、…星野アイっていいます。あっ、もう星野じゃなくなっちゃったか。兎に角、この人の妻です」
「…済まない、コイツは少し頭の病気を患っていてな、端的にいって俺のことを夫だと思い込んでる精神異常者だ。…どうした、吾郎?FXで全財産擦ったみたいな顔して。あっ、お前の名札んとこについてるソレ…えっ、お前の推しのアイドルってまさかこのクズ!?」
「…そうだよ、心折れそう」
「お前人を見る目なさすぎだろ。コイツの中身、俺と同レベルのクズだぞ。てかお前がアイドルにハマったのって確か四年前だったよな、その頃のB小町は結成間もないただの地下アイドルだった筈だ。宮崎から動けんお前がどうやってコイツを見つけたんだ」
「患者の一人が熱心なファンだったんだよ。その子がどうやってアイに出逢ったかは俺も知らない」
「うーん、まぁ何回かはbsやcsやラジオには出てたからそれで見つけたのか?まあ、どうでもいいか。口止め料にちょっと色つけとくよ、だからどうかこの仕事を受けてくれないか?」
「了解だ、それは分かった。医者としての責務を果たすと約束しよう。で、相手は本当にお前じゃないんだな?」
「ああ、俺は自分の名誉に関わる嘘はつかん。…相手は責任能力のない未成年とだけは言っておこう」
「闇深っ!これ以上詮索するとヤバそうだな」
「ああ、それも含めての口止め料だと思ってくれ。という訳で契約成立だ、この書類にサインをして貰おう」
そうして、俺は何とか仕事を果たした。
…俺の仕事って、アイドルのマネージャーだよな?何でこんな事になってんだ。
▲
それから暫くは東京と宮崎を行き来する生活が始まった。俺としちゃ吾郎に全部任せても良かったんだが壱護が旅費は経費で落とすから行ってやれといって聞かないのだ。
揃いも揃ってあのアイドルモドキに魅入られやがって。
お陰様で俺の自由時間は殆どない。
まぁ、いい。俺には壱護と交わした"あの契約"があるからな。履行されさえすれば一生遊んで暮らせる。ガキをこさえたアイドルモドキともおさらばだ。
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