プロローグ第一話 コーヒーと出会いとメイドさん?
一発屋という言葉をご存じだろうか?
分かりやすく言うとテレビで一時は流行っていたが少したって見なくなった芸人や作家のことをいう作家として呼ばれたくないだろうNo.1の言葉だ
猪瀬はそう呼ばれている。
猪瀬《いのせ》 優也《ゆうや》
ラノベ作家である。
いや、元ラノベ作家というべきか?
猪瀬のデビュー作 『少年と愛』はそこそこ売れたがそれからはスランプに陥りいい作品を書けないでいる作家だ。
担当の編集者矢崎《やざき》が言うには
「よくあるバーンアウトシンドロームですよ!すぐいい小説がかけますよ!」
と励ましの言葉を貰ってはや2年
猪瀬は何をかいていいか分からなくなっていた。
このまま異世界物を続けていいのか、
思いきって新しいジャンルに挑戦してみるか
だがうまく行くのか?
なんて考えを延々と繰り返す不のスパイラルに入っていた。
猪瀬はそのスパイラルをダークノーエンドスパイラルと名付けた。
「ダークノーエンドスパイラルってどこのバトル漫画ですか猪瀬先生。」
担当の矢崎は腹を抱え笑いながらテーブルに突っ伏す。
「そんなに笑わなくてもいいじゃないですか!こっちにとっては死活問題なんですよ!?」
「悪かったですって、猪瀬先生コーヒーでも飲んで落ち着いて。お姉さんアイスコーヒーミルクマシマシで二つね!」
矢崎はまるでラーメンでも頼むようにおかしな言い方でアイスコーヒーを頼む。
矢崎は自他共に認める変人である。
打ち合わせにメイドカフェなんて指名してくる変人で、テンションがよく分からない人、それが周りからの矢崎の印象である。
薬物で逮捕されたと聞いても知ってる人は誰も驚かないだろう。
そんな人だから新人作家の発掘や編集をやれているのかもしれないが。
「それで次回作のアイデアすら思い付かないと。」
矢崎は突然冷静になり冷たくそう告げる。
「はい。もう引退したほうがいいんですかねー」
「そんな台詞軽々しく言わないでくださいよ!」
このテンションの変わりようがついていけないと言われる原因である。。アイスコーヒーを飲んでいるのにいきなりあつあつのお茶を口に入れられるような変化だ。
「そうだ先生、これ興味ありません?」
と矢崎は何か思い出したかのように鞄を開け一つの原稿を取り出した。
「こういうのって作家に見せていいんですか?守秘義務とか大丈夫ですか?」
「まぁまぁ、それは私と先生の仲ですしね♥️、あっ編集長には言わないでくださいね!」
矢崎は耳元でこそこそそう告げる。
彼女が美人という事もあり羨ましいと周りの視線を感じるが全然そんな事はない。
薬物常習犯ってくらいのテンションの降り幅なのだ。猪瀬はかわって欲しいとすら思っていた。
「編集長にばれたら駄目なら見せないでくださいよ。どれどれ『エルフ』?シンプルなタイトルですね。」
呆れながら猪瀬はその小説を読み始める。
「アイスコーヒーミルク多めです~」
そんな中ウェイターのメイドがアイスコーヒーを運んでくる。
「ありがとねお姉さん!所でLINEやってる?」
「打ち合わせ中にナンパしないでくださいよ。」
「ごめんなさい。デート中に他の人にうつつ抜かすなんて彼女失格ね!」
「誰が彼氏ですか!誰が!」
こんな風なノリが毎回続く。
本当に嫌になる。
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