大会その4
『マスター、マスター』
「ん?」
『13試合目の相手が決まったようですよ』
ヴェノミナーガさんは控え室のテレビを指差しながらそう言った。
俺は相手の切り札を戦いながら自分の目で見るのが楽しみなので見ていないが、ヴェノミナーガさんはスナック菓子をポリポリしながら全部見ていたらしい。
「どっちが勝った?」
『男の子の方です。まあ、当たり前ですよね。現、日本のジュニアチャンプなんですから』
「そうだな」
『どうします? マスターの今のデッキでは分が悪いですよ? ぜひ! ぜひ!私のデッキを…いいえ、私のデッキを使ってください! お願いします! 何でもしますから! ゲヘヘ…』
「どうどう」
俺に分が悪いデッキなのか。
それは兎も角、ヴェノミナーガさんの何でもするとかいう言葉はヴェノミナーガさんにプラスになることにしかならない。
ちなみにだが、こっちの世界では大会の最中であってもデッキの中身どころか、デッキそのものすら変えることが出来るのだ。
「ならフィールドに出て回りのモノを何も壊さないって約束できるか?」
ヴェノミナーガさんの事だ。
出した瞬間、ヒャッハー!して周囲が大惨事世界大戦になることは間違えない。
『……………………ちょっぴりですから…』
「ちょっぴり会場を半壊?」
『……………………4分の1ぐらい…』
「何がぐらいだコラ! 大会中止になるわ!」
『ぐぬぬ……』
◇◆◇◆◇◆
「来ねぇ…」
時は進み、第13試合目。
俺は開始時間の10分ぐらい前からデュエルリングに立っていた。
だが、開始時間を過ぎ、数分経過したというのに対戦者が現れないのだ。
『このままなら不戦勝ですね』
「ふむ…」
審判には30分は待ってくれと言っておいたからまだ、大丈夫だろう。
現、日本ジュニアチャンプの実力をこの目で見てみたいのだ。
どうしたものかと考えたところで人影がデュエルリングに登ってきた。そして、開口一番に一言――。
「すみませーん。寝過ごしましたー」
『ふぉ!?』
ヴェノミナーガさんがドリフトのような転け方を見せた。
俺も片手を額に置いていたが。
どうやらコイツが俺の対戦者……。
"茂木 もけ夫"というらしい。
想像できないだろうがなんとコイツ、日本のジュニアカップのチャンプなのだ。
「君もその精霊さんたちも待たせちゃったね。ごめん」
「なに……?」
『おー、この子見えてるんですねー』
『ゲッゲッゲッ…』
ヴェノミナーガさんとデス・ガーディウスが普通に見えてるのにケロっとしてるってどうなってんだ…。
「じゃ、行くよー」
「おう」
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