ハーメルン
アラサーおっさんが剣と魔法の異世界を精神コマンドで攻略する(お試し短編版)
0003話:商人ブライアン家の客室で異世界で使うべき精神コマンドを思い知る(始まりの街スタートス)

 スタートスの街は城壁沿いこそ石造りの建物が多かったがすぐに木造の家ばかりが続き、しばらくするとまた城壁で囲まれた区画にたどり着いた、最初の正門は新南門と呼ぶらしく、今いる場所は昔の城壁の旧南門で外側に行くほど新しくて貧しい区画らしい。そしてブライアンの家は旧市街地区にある切り出した石で出来た屏に囲まれ整った庭のある大きくてきれいな石材と木材で出来た家だった。
 そういえばスタートスの由来は始まりの平原こそが人類がもっとも繁栄して文明を築いた出発点だからというこの国の主張する歴史が由来らしい、スタートスの街は最初は王都だったが随分昔に遷都した旧王都という位置づけだ。
 王国の名前は遷都した時に改名してネオトス王国と名乗ってるらしい。スタートとかネオとか英語じゃないかと思ったらどうも英語に似てる古代語らしく日常的にありがとうとは別にサンキューを使うなど現代の日本人と変わらない感覚で会話をしてるようだ。
 日がだいぶ落ちてきて街の明かりと馬車に掲げられたランプだけではあまり町や人々の様子がわからないからついついリーザと話し込んでしまう。ブライアンは流石に事故を起こさないように前を向いて会話に参加することなく手綱を操って家の前に停車する。

「おかえりなさいませブライアン様、リーザ様。お客様も出迎える準備は出来ております」
 家の前にはシブイ顔つきの老執事と動きやすそうな服装を着た小間使いの男性とメイドの3人が出迎え、小間使いが幌馬車の運転を変わって納屋に向かおうとする。

「ゲンタ様、我が主人を助けていただいて他の者を代表してこのバトラスお礼を申し上げます。本当にありがとうございました」
 老執事が背筋をピンと伸ばして一切のブレもなく綺麗に会釈をすると大変サマになっている。

「お食事の準備が整うまで客室でおくつろぎ下さい、部屋に湯と着替えもご用意しておりますので」
バトラスに促されて家の中に入るとライアン少年も居た。部屋には彼が案内してくれるらしい。

「今着ているものは洗濯させていただきます、背中だけでもお拭きするよう言われてますので体を拭き終わったらコチラのお召し物をどうぞ」
 客室に案内されると湯気を立ててる手桶と綺麗な手ぬぐいがあった、どうやらお湯で濡らした手ぬぐいで背中を拭いてくれるらしい。初対面の10歳ぐらいの少年に背中を拭いてもらう……なんとも恥ずかしい気分だが、バトラスさんや小間使いの男性、メイドやリーザに拭いてもらう事を想像したらライアンにやってもらうのが最適なような気がした。
 コフラスではまだ風呂文化が一般庶民に浸透していないんだろう、体をお湯で拭くだけでもこの世界ではだいぶ衛生概念は高いと思う。そんな事を考えながら俺は背中だけでも頼むよと言いながら上着とTシャツを脱いで籠の中に入れる。

「それでは失礼します、強いようなら言って下さい」
 椅子に座ってライアンに背中を向けているとお湯で濡らして固く絞った手ぬぐいで背中を拭かれて気持ちがいい
「あの、ゴブリンってどう倒したんですか?」
 最初は遠慮がちにしてたライアンにもっと強くしていいよと答えたら緊張が解けたのか質問が出てきた。

「ん~雷で敵全体を攻撃するスキルがあるんだけどボスだけギリギリ生き残ってね、最後は敵の剣を避けて殴り倒したね」
 これがその剣とずっと持ってた戦利品を掲げると背中を拭く手が一瞬止まる。町中でクラス商人の息子にはゴブリンも剣も刺激が強いらしいが、すぐに腰の近くまで拭いて背中拭きを終わらせていた。

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