第十五話 vsデリバード 慈悲なき心
「貴様、今『仮面の男』とたしかに言ったな? 私のことを知っているということか。
なるほど。ここ最近私のことを探っている身の程知らずの輩がいるという噂が流れていたが、貴様のことであったか」
「……だったら何だよ?」
俺をかばって敵の攻撃を受けたことにより戦闘続行が難しくなったピジョンをボールへと戻し、仮面の男をにらみつける。いつ襲い掛かってこようとも対応できるよう、行動一つ見逃さないように注意深く。
……変声機でも使っているのだろうか、とても人間とは思えない無感情で機械のような声だ。
顔全体を覆っている不気味な仮面も手伝って、より相手の異質さを強く醸し出している。あれでは相手が男なのか女なのか、その区別さえつかない。
やつの側にいる、おそらく手持ちポケモンであろうデリバードに関してもそうだ。本来ならばおとなしい個体であるはずだが、まとっている雰囲気がそれを否定している。
……おそらく、ピジョンを攻撃したのはこいつだ。こおりタイプの一撃、ひこうタイプであるピジョンにはよけいにダメージがいってしまったのだろう。……俺さえしっかり警戒していれば、こんなこととでなかったはずなのに。くそっ……!
だが、今ここで冷静さを失うことは許されない。とにかく未だに得体の知れないこいつから少しでも情報を抜き出すことが優先だ。
……それにしても、『俺達が調べているという噂が流れていた』だと? どういうことだ? この言葉から察するに、俺達の動向を監視しているものが……あるいは、俺達の関係者に内通者がいるということか?
「なぜ私を探る? 貴様程度のものがいくらあがこうとも敵わぬというのに。……それすらわからぬ命知らずか?」
「別に命知らずというわけではないさ。ただ、命に代えてでもやらなければならないことがあるだけだ」
「……ほう。それはそれは、大層な覚悟だ。一体それは何だ?」
「答えろ。お前ゴールドを……俺の後輩をどうした!?」
相手の言葉にひるむ事無く、むしろ強気で攻める。ここで何も言わないのは下策だ。
……まずは第一に、ゴールドの安否。やつが本当のことをすべて話すとは限らないが、それでも何かしら手がかりがつかめるはずだ。
「ゴールド。なるほど、確かに以前私に挑んできたトレーナーがそう呼ばれていたな」
「やはりか。……それで、あいつは今どうしている? お前が捕らえているのか?」
「やつなら死んださ」
「なっ……!?」
死んだ、だと? 言っている言葉が理解できず心の中で同じ言葉を反芻した。
……馬鹿な。たしかに未だに連絡が取れていない日々が続いている。しかしあいつが死ぬなんて、ありえない!
「嘘をつくな! あいつがそう簡単に死ぬはずがない! 信じられるか!」
「信じようと信じまいとお前の自由だ。……いいだろう。ならば教えてやろう。
数日前、やつはいかりの湖で私に勝負を挑んできた。すでに敗北を経験したというのにも関わらず、哀れなものだったよ。結局私に一矢も報いることができず……やつは湖の底深くへ沈んでいった」
「……いかりの、湖」
……ようやくだ。これで、全ての話がつながった。おそらくやつが言っていることは全て真実だ。
数日前、ゴールドとの連絡が途絶えた日のことだ。その日一件のニュースが大問題として取り上げられていた。
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