ハーメルン
ワカバの導き手
第三話 vsアーボック 急襲、秘められた力

 ―― 29番道路 ――

 ワカバタウンとヨシノシティを繋ぐ一本道、29番道路。俺も何度かこの道を通ったことはあるが、あれはあくまでも旅などではなく隣町へのちょっとした用事だとか、そんな理由であった。それゆえに当時はバトルのことも一切考えていなかった。
 だが今回は違う。旅するにあたってここは初心者トレーナーでも道に迷うことはないだろうが、道端には自慢のポケモンを引き連れたトレーナー達はいる。さらにポケモンを鍛えようと勝負を仕掛けてくる者達がいる。
 そしてポケモントレーナーならば受けた挑戦から逃げるわけにはいかない。……まさに今の状況であるのだが。

「マダツボミ、“はっぱカッター”!!」
「ヒノアラシ、“ひのこ”だ!!」

 相手のマダツボミの体から放たれる無数の鋭利な葉の刃。
 対してヒノアラシは背中から炎を出して臨戦体系に入る。そして“はっぱカッター”を迎え撃つように、ヒノアラシの口から一直線に炎が噴出した。

 炎はまっすぐ相手に向かって行き、全てのはっぱをいとも簡単に飲み込んでいく。
 そしてそのまま勢いは衰えることなく、炎はマダツボミの体を襲った。炎はあっという間に体中に広がり、その体を飲み込んでいく。

「マダツボミ!!」

 マダツボミのトレーナーの短パン小僧が声をかけるが……炎が消えるとともに、マタツボミは倒れた。
 これで相手のポケモンは全て戦闘不能。勝負終了だ。

 ……たしかにこちらとしてもポケモンを鍛えられてよいのだが、それにしてもトレーナーの数が多くないか?
 ワカバタウンを出発してすでに三人目のトレーナーとの勝負。一応全勝しているが……今まで野生のポケモンとの勝負なら話は別だが、トレーナーとのバトルなどめったにしたことがなかったために、いまだ慣れやしない。

「……僕の負けだ。はい、賞金だよ」

 短パン小僧から戦いの賞金をもらう。
 ……賞金といっても、負かした相手から現金を手渡しでもらうとか、そういうものではない。
 お互いがお互いのトレーナーカードを取り出し、近づける。賞金のやり取りは手渡しではなく、ポケモン交換のように通信してやり取りを行うのだ。このトレーナーカードはポケモン図鑑と同等の技術を誇り、なかなか精密にできているらしい。(サツキさん談)しかもカードには指紋も登録しており、犯罪防止も徹底されている。

 さらに口座を作っておけば別の口座に振り込んだり、賞金を分けることもできる。俺も母さん(というか自宅)の口座はあるが……俺はしていない。なんか関係のない物の購入に使われるのでは、と疑問が浮かぶからだ。というよりも以前あったのだ。
 ちなみにこのバトルで俺の口座の残金は4200円となった。(最初は3000円だった)旅を始めてさっそく1200円稼いだということになる。

 受け渡しが終了すると、短パン小僧はポケモンセンターに行くのだろう。マタツボミをボールに戻して立ち去っていく。「次は負けないからな!」などと言っているが、おそらく会うこともないだろうな。……セリフが完全にかませ役だよ。

「お疲れ様、シュン君」
「待たせましたね、サツキさん。さあヨシノシティへ行きましょうか」

 傍で戦いを見守っていたサツキさんに声をかけて再び先を目指す。野生のポケモンやトレーナーとの戦いの時は安全な場所で俺のことを見ていてくれる。時にアドバイスをくれることもあった。

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