第四話 vsマダツボミ 戦いに向けて
トレーナーとの戦いや野生ポケモンとの戦いはあったものの、その後は(先ほどのアーボックによる急襲のような)ハプニングもなく無事にヨシノシティまでたどり着いた。……しかし、隣町とはいえども今回はバトルが多かったために時間がかかってしまった。普段はそれほど時間もかからないのだが、今はワカバタウンを出発してもう2時間ほどが経過している。
そのおかげでポケモンたちのレベルが上がったのはいい事だが……最初から内容が濃すぎる。ここまで戦っていたポケモン達にも疲労が伺える。
「まずはポケモンセンターへ行きましょう。ポケモンたちを回復させて、私達も少し休まないとね」
「賛成です。さっそく行きましょう」
サツキさんの提案に了承して街に入ってすぐのポケモンセンターへ足を向ける。
思ったよりも大きく、ポケモンセンター内には多くの人がいた。ポケモンセンターは各地域に展開しているもののワカバタウンにはセンターは存在しないので、俺にとっては物珍しいのだ。
「こんにちは、トレーナーさん。こちらではポケモンの体力を回復します。あなたのポケモンをお預かりしますか?」
「はい、お願いします」
俺は四個のモンスターボールを取り出し、受付のジョーイさんに預ける。
自分の力で回復ができないこともないのだが、外傷を治すならばセンターに預けたほうがいい。それに俺の場合は自身の体力の問題もある。だからこれから可能な限りは回復はセンターを利用することにしよう。
「あら、彼女とご一緒ですか? よろしかったらそちらの方も一緒に預かりますよ?」
「あ、わかります? そうなんd……」
「いえ。私は彼の旅に同行しているだけです。バトルもしていないので、けっこうです」
「……」
うん、わかっていたけどね。でも夢を見るくらいはいいと思うんだ。許されることだと思うんだ。だからそんなにはっきりと言わなくていいと思いますよ。……いかん。悲しくて自然と涙が……
「それでは、ポケモン達が回復するまでしばらくお待ちください」
身分証明のトレーナーカードを登録して、俺達はひとまず近くの長椅子に腰掛ける。
……自動販売機で買ったおいしい水が本当に美味しい。ひんやりと冷えていて疲れた体を癒してくれる。アーボックの襲撃の際にけっこう走ったので汗もたまっていたのだ。
「ねえ、シュン君」
「はい? なんですか?」
「……さっきは、助けてくれてありがとうね」
「……ああ、アーボックのことですか」
突如サツキさんが俺にお礼を言ってきた。
先ほどの急襲のことだろう。何せ毒を持っている相手だ。生身の人間が受ければ、へたすれば命にも関わる。
あの時は俺も焦ったけれど、反応できなかったサツキさんにとってはそれ以上に深刻なことだったようだ。
「礼を言われることではないですよ。それに、結局のところ倒すどころか敵に背を向けて逃げだしましたから。……格好悪いところを見せちゃいましたね」
「そんなことないわよ。野生ポケモン相手に、果敢に立ち向かっていく姿……格好良かったよ」
そう言って素敵な笑顔で微笑むサツキさん。
……直視できずに思わず目を逸らしてしまった。その笑みは反則です。
駄目だ。このままでは変な空気になってしまう。何か別の話を持ちかけないと……
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