第六話 vsサンド 読めぬ心、サツキの神秘
キキョウジム戦を終えた俺達は、ジム戦で疲弊したピカチュウとマグマラシの回復のためにポケモンセンターに戻っていた。
二匹を受付のジョーイさんに預け、そして適当なテーブルを見つけて腰を下ろす。それからサツキさんと向かい合って話しはじめた。いつも以上に真剣なその表情から、ことの本気さを伺える。
「……それで、どう思いましたかサツキさん。キキョウジムのリーダー、ハヤトは?」
先に俺が話しを持ちかける。
話というのはなにも今回のジム戦の反省会、というわけではない。たしかに今回のバトルを通じて学ぶ点もあったし反省する点も多数あったが、それは自分の手で少しずつ解決していくつもりだ。
今話している内容は、――キキョウジムリーダーであるハヤトが果たして仮面の男なのかどうなのかということだ。たしかにジムバッジを手に入れたものの、俺がジム戦を挑んだ本来の目的はジムリーダーに勝つことではなくリーダーの動向を探ることにある。元々の目的を忘れてしまっては本末転倒だからな。
……戦っている最中はバトルに夢中だったせいで、若干忘れかけていたけど。まあ実力をつけるという目的もあるし、問題はないだろう。
ジムリーダーである以上、誰もが仮面の男の正体だという可能性はある。俺自身は直に戦ってみて疑わしい点は見られなかったものの、第三者の視点から見ていたサツキさんにはどのように映っていたのか、またジム内に何か手がかりがなかったか聞かなければならない。
「……彼はおそらく、白ね」
「……はずれ、ってことですか」
サツキさんはしばし考え……そして結論を述べた。『ハヤトは仮面の男ではない』、という答えを。もしも最初から当たりをひいたならばそれほど苦労することはなかったのだが、そううまくはいかないか。
……もっとも、ひょっとしたらはずれでよかったのかもしれない。最初から仮面の男と遭遇していたならば、俺の今の実力では相手にさえならないだろう。今はまだ自分の腕を確かめる程度で戦ったほうがよいとさえ感じる。それにああいう真面目な人がやはり悪人でなくて良かったと思う。
「ジム戦の様子を見ても、就任したばかりとはいえジムリーダーらしく挑戦者の実力を存分に試すように上手く戦っていたからね。……それに、キキョウジム内を私のポケモンに探らせてみたんだけど、何も怪しいものはなかったわ」
「そこらへんは、さすがはジムリーダー、ってところですね」
たしかに今思い出してみれば、就任して間もないというわりには堂々としており、戦う姿もさまになっていたと思う。
ジムリーダーの役割というのは、なにも挑戦者とただ戦うというわけではない。その戦いを通して挑戦者のポケモンの知識や戦略をためし、ポケモン達の、そして挑戦者自身のトレーナーとしての実力を測るということにある。ゆえにただ強いだけのトレーナーではジムリーダーを勤めることはできないということだ。挑戦者への配慮、それが何よりも大切となる。
ジム内にも怪しいものがないとなると、なおさら疑惑は薄れてくる。ロケット団という大掛かりな組織を従える以上、それなりの準備や道具も必要となる。ゆえにジムリーダーの活動拠点となるその町のどこかに何かしらヒントがあると踏んでいたのだが……ジム内にないとなるとまずキキョウシティにはないだろう。この街には他に大きな施設といえばマダツボミの塔くらいのもので、その塔も俺が昨夜調べたばかりだ。
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