第五話
「急げ!早くMK―Ⅱを運び出すんだ!」
滑走路に整備長と見られる男性の声が響き渡る。
現在、滑走路では輸送機から新型PTの搬送作業が行われていた。
俺はと言うと、最寄りのシェルターへ避難しようとしたのだが、先程の爆撃によって使用不能となってしまったので、別のシェルターを確認するとのことで待機しているのである。
時折銃撃音や爆発音が聞こえてくることから敵が近づいて来ているようで、切羽詰った空気が張り詰めていた。
「はいはい、どいて下さいですよ~」
「あ、はい」
そんなこと考えていたら咄嗟に声をかけられたので、慌ててその場から退くと、目の前を金髪碧眼で作業服に大きめの白衣を羽織り、メガネをかけ頭にゴーグルをつけるという、奇抜なファッションをした俺より年下ではないかと思える少女が横切っていった。
すると、近くにあったトラックに光が降ったかと思うと、爆発して激しく燃え上がった。
「危ない!」
「うわぁ!?」
トラックの破片が飛び散ったので、少女を押し倒すと素っ頓狂な声が聞こえてくる。
だが、気にしている余裕はないので、包み込むように抱きしめると背中に鋭い痛みが走った。
「ぐっ!?」
多分破片が背中に刺さったようだが、それでも少女が怪我をしなかったから問題ないだろう。
「大丈夫か?」
「は、はいですけど、お姉さんが」
さり気なく女に間違えられたが、気にしている場合じゃないな、うん。この涙は痛いからだもんね。
「大丈夫だ。それより…」
辺りを見回すと燃え盛る炎の中、他に負傷して倒れる人や、助けようとする人で大混乱に陥っていた。
母さんが死んだ時みたいに、あの地獄のような…。
「ッ!!」
上空を睨み付けると、この惨事を引き起こしたと思われる、黒いゲシュペンストが浮いていた。
黒いゲシュペンストが高度を下げていき、着地し屈むと装甲が開いて搭乗者が降りてきた。
バイザーで顔はよく見えないが、多分俺と同い年くらいの男性だと思う。
そして腰のホルスターから自動式拳銃を抜き、辺りを警戒しながら、牽引途中だったヒュッケバインMK-Ⅱへと走り寄って行き、装甲に設置されているコンソールを操作すると、MK-Ⅱの装甲が開き乗り込もうとする。
「ちょっと待てぇ!」
「!」
「ええ!?」
咄嗟に大声で呼び止めてしまい、男が拳銃を向けてくる。予想外の事態に少女が驚愕の声を上げる。
正直自分も驚いているし、馬鹿なことをしているという自覚もある。それでも自然に声が出ていた。
「民間人だと?死にたくなければ失せろ」
男が不思議そうに呟く。まあ、こんなところに民間人がいれば当然か。にして容赦なく撃たれるかと思ったが、そうでもないようだ。
「お前、その機体を奪ってどうするつもりだよ!」
「お前には関係ない」
デスヨネー。って言われて引き下がる俺じゃない!
「お前、テロリストなんだよな?」
「そうだ」
あっさり認めたな。大抵に奴はテロリストだって、認めたがらないって父さんが話してたことがあったが…。
「こんなことして何になるんだよ!テロで世界が変わると思ってるのかよ!?ただ、人が傷ついて悲しむだけじゃねぇか!!」
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