21話「マキアスの謎を追え」
「ライから頼れる先輩だと聞いていたけど、まさかクロウ先輩だとは……」
「おいそこ、微妙な顔すんなって」
5月23日、自由行動日に駅前の広場でリィンとクロウを会わせた反応が以上である。
クロウは一体リィンに何をしでかしたのだろうか。
「はぁ……もうギャンブルには付き合いませんよ」
「ハハッ、別に50ミラを取るつもりじゃなかったんだがな。そういやあの時のコイントス、どういうトリックか分かったか?」
「そうですね、……両手で取らずに地面の袋に落とした、で合ってますか?」
「うお、普通にばれてら」
リィンとクロウの話から察するにコイントスに関するギャンブルをしたらしいが、どうにも過程が分からないので2人に聞いてみる事にした。
……
…………話を纏めよう。
時期は4月17日、リィンから学生手帳を渡された日の放課後に起こったらしい。学生会館前で偶然リィンと会ったクロウは、リィンから50ミラコインを借りて手品を行った。その内容は親指で弾いたコインがどちらの手に握られているかという単純なものだが、手品と言う言葉通り、クロウの両手にコインはなかったらしい。そして、結局クロウは種を明かさずそのまま帰っていったと言うのが一連の流れである。
──まあ、要するにクロウはリィンから50ミラコインを借りパクしたのだ。
「小さ」
「おいおい、小さい言うなよ。何なら今ここで、……って今10ミラしか持ってなかったわ。悪ぃ」
本格的に大丈夫だろうか。と言うより10ミラでは駄菓子程度しか買えないのではないだろうか。
色々な意味で心配になるライとリィンであった。
「ちょっと待て。何だよその残念そうなものを見る目は」
「鏡でも持ってきますか、50ミラ先輩」
「うっせ、何時か20万ミラくらいにはなってやるっつーの! ──って言うか話ズレてねぇか!? 確か俺達が集まったのはマキアスの問題をどうにかする為だったよな?」
と、そうだった。
今回集まったのはクロウの言った通り、マキアス関連の問題を解決する為だ。
「それで何か策でも?」
「まぁ一応な。つっても奇抜な策とかじゃないから、気楽に聞いてくれや」
クロウはそう前置きし、自身もベンチへと腰を下ろしながら本題へと移る。
「まず始めに言っておくが、マキアスの嫌い方はどうも普通の貴族嫌いとは違うな」
「……普通?」
「あぁライは知らないかもしれねぇが、一般的な貴族嫌いの原因は貴族に対する不満とかから来てんだ。……けど、話を聞く限りマキアスの場合は同じ様でどうも毛色が違う。もっと深刻な理由、それこそ貴族に手酷く裏切られた様な経験があってもおかしくないって訳さ」
肘をつき手を組みながら説明するクロウ。
話を元に構築した推論だが、割と的を射たものかも知れないとライは感じた。
「でも、そうだとしたら、直に問題を解決するのは無理があるんじゃないですか?」
クロウの考察を受けてリィンが質問する。トラウマ等はそう簡単に克服出来るものではないと、何よりリィン自身が理解しているからだ。
しかし、それでもクロウは何時もの態度を保ち続けていた。
「ちっちっち、目的を間違えるなよリィン。俺達の目的はあくまで人間関係の修復であって、過去のトラウマを癒す事じゃねぇんだ。……ま、トラウマを癒せりゃ言う事ないんだが、今回は着実に行くとしようぜ」
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