嵐のあとに
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それから時が経つのも早く……という言葉で済ませないようなくらい彼女たちと一緒にいるのは辛かった。このクラスは毎日予想外の事が起き続ける。そう思える程に目まぐるしいのだ。私が入ってから暫くは私を中心とした事件が起きた。どうあがいても巻き込まれるのには正直に言って勘弁して欲しい。ただでさえクラスメイトたちの名前を必死に覚えようとしているのに――だ。(フウカがクラスメイトの名前は覚えるものだと教えてくれたし)
どんな事件があったのかといえば私の住居のことに始まり、茶々丸を連れて買い歩く予定だった家具集めを無理やり手伝ってくれたり、私の部屋で小さなパーティが開かれたり(よくあの人数が入ったなぁとか思ってたり)した。事件というより彼女たちからすれば一種の歓迎だったようで嬉しくもあったが。それは騒がしく険しいものだった。
ある程度言葉を学んだとはいえ私の教科書は未だ英語表記で、ペーパーテストすらも一部英語表記にしてもらっている。楽ができて嬉しいのだが答え合わせ的な集まりに入れないのが少し悲しい。完璧に覚えるまでもう少しタカミチに教えてもらおうか。でもあることが原因で少し懸念しているのもあったりする。
そしてその原因というのはあの二人に無視されていることだ。謝りたいと思っているあの二人に。時間が合わないのならその時まで待つのだがそうではなく徹底的に拒絶されているようにしか思えない。
どうせなら二人同時に謝りたいから二人が一緒にいるときに謝りたいのだが何かと理由をつけてマナが離れる、そしてセツナが残り彼女が一人では用事があるといって離れるのだ。……まだ思うように言葉が出ない私が悪いのもあるのだろうが、呼び止める暇もなく彼女たちが離れてしまう。
気落ちしている私にエヴァは面倒だから嫌だと助けてくれないし、茶々丸に言ってみたが主人から傍観しろとか言われたみたいで無理だった。
何のために言葉を覚えたのか少し疑念が湧いてしまう。今はいろいろやりたいことができたし恩返しもできるから大事だと思う。けどやっぱり謝れないのは辛い。
はぁ……と今日何度目かわからないため息を溢す。どうしたらいいんだろうか。
「なんだ、悩み事か?」
唐突にかけられた言葉にはっとして顔を向ければそこにはチサメが居た。
「なんだその意外そうな顔。ま、私としても会おうと思って歩いてたわけじゃないしな、意外なことに出くわしたのは同じだけどさ。で、なにか悩み事か?」
「そう。謝りたい人達に謝れないの。エヴァ達に相談したけど助けてくれなくて……」
そう答えればチサメは気だるそうに頭を掻いた。やっぱりこの手の相談事は面倒なのだろうか……。やっぱり何でもない、ごめんなさいとだけ伝えて去ろうとすれば彼女は引き止めるように私の肩を掴む。
「あーもう! そうじゃねぇよ。手伝ってやる。話を聞いてはいそうですか、で突き放すほど私は落ちぶれちゃいねぇよ」
「……本当に?」
「それに口約束だけど仲良くするって言っちまったしな。私に手伝えそうならやるよ。いや違うな、私がそうやりたいって思った、手伝ってくれるよな?」
やはり面倒そうな仕草をしたけれど彼女はそう言ってくれた。あの時私が言ったことに意趣返しするように言った彼女の顔はとても華やかだった。
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