ハーメルン
インフィニット・ストラトス Homunculus《完結》
成長と暗躍
織斑千冬が軍に来てから幾許かの年月が過ぎた。
世間では、より女尊男卑の傾向が強くなり、IS自体も変化を見せていた。
武器収納領域の拡張とエネルギーの増加。第二世代が広く普及されるようになる。装甲は薄くなり、生身の体に手足の装甲に武器と翼。つまり、見た目は機械部分が少なくなっていった。これはISがスポーツであり、女性しか扱えないという点での発展と言えよう。単純に、機械は女性受けが悪い。勿論機械好きの女性もいるが、大衆向けではないのは事実だ。エネルギーシールドが発展した分、装甲が薄くなり、女性らしさや女性の美しさを押し出すようになるのは、ある種の必然的であった。
一方、軍部ではラウラが漸くナノマシンの適合が合うようになってきた。千冬の指導も合わさり、彼女の実力は急激に上がるようになっていた。
「勝者ラウラ!」
IS部隊でトーナメント式の模擬戦。
当然、アデーレと千冬と白は参加していないが、その中でラウラは初めて一位という好成績を収める。ラウラはもう軍隊経験も長く、無邪気に喜ぶようなことはしないが、それでも嬉しさを隠しきれないようだった。アデーレは長年の苦労が報われた彼女のことを思い笑顔を見せる。千冬も人一倍指導したラウラのことが嬉しいようで、口元に少しだけ微笑みを浮かべていた。そんな二人に対して、相変わらず白は無表情のままだった。千冬は流石にこれは褒めるのではないかと思ったが、白からラウラへの態度はいつもと同じで、ある意味でラウラ以上に苦労しそうだと思った。
ラウラの様子から白と何かあったことは分かっていたが、白本人は褒めることができないと言っていたことから、恐らく別の何かがあったに違いない。
「ボーデヴィッヒ」
「これは教官。おはようございます」
朝の食堂でたまたま千冬はラウラと出会した。昔は拙かった敬礼も今では様になっており、少しばかり身長も伸びた。適合が可能になった為、眼帯は最早必要ないのだが、オッドアイは無駄に人目を惹くからと付け続けるようにしたらしい。
最も、美人と言って差し支えない程、容姿端麗である彼女を軍で知らぬ者はいない。人形のように可愛らしい容姿は男女問わず人気がある。今更目立つも目立たないもないのだが、ラウラ本人は気付いていないのだろう。自分のことになるととことん鈍い少女だった。
「白から何か言われたりしたか?」
ラウラは落ち着くからと割と非番の日には白の部屋に入り浸っていたりする。普段も暇さえあればラウラは白と一緒に居た。白も別に拒絶しないので、2人が一緒に居るのは軍では当たり前の光景にもなっている。それでも浮いた話題が出ないのは相手が白だからだろうか。
「……何か、ですか?特に報告は受けていません」
「いや、そういうのじゃなくてだな。折角、昨日模擬戦で優勝したんだ。それで一言くらいなかったのか?」
「そういうことでしたか。特にないです」
あっさりとしたラウラ。
「……そうか」
「それがどうかしましたか?」
むしろお前はどうもしないのか。
その言葉は飲み込んでおく。
確かに、精神面は安定したので褒める必要は無くなった。二人の間で何を話し合ったのか聞くのも野暮というものだろう。それでも、そういうことをしないかと思ってしまうのは人の情であろうか。
「……ボーデヴィッヒは白から褒められたいか?」
「褒められる……」
ラウラは暫し宙を仰ぎ見て、視線を戻す。
「想像出来ません」
「すまん。無理を言った」
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