ハーメルン
日本人のマセガキが魔法使い
私の知らぬところで何を………

どうしたものか。先程のことを思い返し、そう考えを巡らせる。
あの二人、今はまだ絶対に会わせてはいけない。ましてや、俺と同時に会うなんて、絶対に避けたい。
ドラコはいまだに俺が純血主義者だと思い込んでいる。確かに、純血主義の考えに一部は賛同しているから純血主義者と言えばそうなのだろうが、マグルの追放なんてものには賛同していない。それをどうやってドラコに伝えるか………。あいつは頑固なところがあるから、いきなりマグルの追放に反対だと言ったら話がややこしくなるのは必須だろう。
グレンジャーもまた、やっかいだ。一度だけ列車の中で純血主義の話になったのだが、そんな考えは間違っている、許せない、と熱く語ってくれた。それはもう、純血らしい俺と純血のロングボトムがなんだか気まずくなるくらい。あいつもまた頑固だ。俺が純血主義の一部に賛同していることを知ったらややこしくなる。
そんな二人が、現状で、同時に俺のところに来ると俺がややこしい目に遭う。下手を打てばどちらか、もしくは二人とも俺と縁を切るとか言い出すだろう。そうなったら関係の修復は難しい。
こうして考えるとあの二人、何となく似てるように思える。場合によっては息の合う仲にもなれるのではないだろうか。
そんな楽観的な考えを頭の隅に追いやる。打つ手としては、先に来た方に状況を把握してもらい、もう片方を納得させるのを手伝ってもらうか納得するまで黙っていてもらうぐらいしかないだろう。とりあえず、一対一ならまだ話しやすい。対策と言えるほどのものではないが、現状で俺ができるのはこれくらいだろう。おとなしく、二人を待つことにした。






夕食を食べ終えたドラコは、少し早足で医務室へと向かっていた。夕食後はあまり時間が無く、もたもたしていたら直ぐに門限の時間になってしまうからだ。
本当は、もっと早く大広間を出たかった。しかし、何故かしつこく絡んでくるパンジー・パーキンソンを振り切るのに思ったよりも時間がかかってしまったのだ。
ノロマなクラッブとゴイルは置いてきた。今はたった一人で人気のない廊下を小走りしている。思えば、ホグワーツを一人で歩くのはここ一週間で今日が初めてかもしれない。いつも、隣にはジンがいた。授業は退屈だけれども、移動時間、休み時間、いつも隣にいた彼のお蔭で毎日が楽しく感じられる。
ドラコにとって、従うのでもなく媚を売るのでもなく、素のままで傍にいる人というのは同年代に限らず少なかった。それは彼の家がそれだけ高貴なものであったということを物語っており、彼にとって少なからず誇りに思えることでもあった。だがやはり、それでも寂しくなる時があった。
その点、ジンはドラコにとって完璧な存在だった。
傍にいながら、全く嫌な気持にならない。落ち着いていて礼儀正しい彼の振る舞いは、家柄上、どうしてもそういったことが気になってしまうドラコにとっても立派なものだった。その上、愚痴や小言も受け入れてくれるし相談にだって乗ってくれる。冗談だって言い合える。
たまに感じていた寂しさはもうどこにもない。代わりに満足感があふれている。
素直になれないドラコだが、感謝の気持ちを伝えたいとは思っていた。だからこそ、彼が入院した時、怒りもしたのだが、これで何か借りを返せると安心した気持ちもあった。
何もいらないと言っていた彼だが、一人の間は退屈だろうと思いドラコが家から持って来た本を渡すことにした。何度も読んだお気に入りの本だが、彼になら渡してもいいと思えたし、感謝する彼の姿と本の内容で楽しく話す自分たちを思うと、むしろこのために本を持って来たのだとも思えてきた。

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