第1話 出会い
LP0001 7月
-自由都市 アイスの町-
「今回はこの仕事を引き受けて貰いたい」
ここは大陸の南東部に位置する自由都市、アイス。都会と田舎町の中間ともいえる、比較的平和な町である。そんな町の一角にある、とあるギルドビルの一室。その部屋では今、二人の男が仕事の話をしていた。話を切り出した男の歳は40才後半から50才というところだろうか、成金のような服を身につけ、髪の毛は生えていない。この男の名前はキース・ゴールド。このギルドのマスターである。葉巻に火をつけ、煙を吐き出しながら言葉を続ける。
「そろそろ、お前も結婚したらどうだ? なんなら俺がいい女を紹介してやってもいいぜ」
「ふん、くだらないことを言ってないでさっさと仕事の話をしろ」
それに答えたもう一人の男。薄手のプレイトメイルとマントを身に纏い、ふてぶてしい態度で腕組みをしている。彼の名はランス。キースギルドに所属する戦士にして、英雄たる資質を備えた人物の一人だ。しかし、彼の行動理念は『全ては俺様のために』というものであり、美女がいれば無理矢理にでもHし、邪魔する奴は皆殺しという、とても英雄とは呼べぬものであった。だが、その実力は本物であり、いつしか彼は鬼畜戦士という通り名で呼ばれるようになっていた。
「せっかちな野郎だな。まあいい、この写真を見てくれ」
そう言い、キースが白い封筒から写真を取りだし、ランスの目の前に置く。ふん、と一度鼻を鳴らし、ランスは写真を手に取る。そこには白いドレスを着た赤い髪の美しい娘と、青いドレスを着た黒い髪の娘が写っていた。
「ほー、なかなか可愛い娘たちじゃないか。がはは、グッドだ!」
「別にお前の好みなんざ聞いちゃいない。この娘たちを見つけ出して保護して貰いたいんだ」
「なんだ、人捜しか。で、彼女たちは何者なんだ?」
「名家の娘だ。こっちの赤い髪がブラン家の次女、ヒカリ。それで、こっちがファン家の長女でグァン。ブラン家とファン家の名前を聞いた事くらいは……?」
「知らん」
「だろうな」
ランスがさも当然であるかのように答えるのを聞いて、キースが苦笑する。ブラン家とファン家、どちらもこの辺りでは有名な名家である。この二人は、そこのお嬢様であった。
「ヒカリの方は、三週間前にパリス学園で行方不明になったそうだ」
「パリス学園?」
「リーザスにあるお嬢様学校だ。警備は厳重らしいんだが、どういう事か忽然と消えちまったらしい。グァンは彼女のルームメイトで、ヒカリを自分で見つけ出すと息巻いていたそうだが、こちらも一週間前から行方不明だ。どちらも身代金の要求はない」
「ふむ、営利誘拐では無いのか」
「多分な。誘拐の真意はまるで判らん。その調査も含めての依頼だな」
キースが葉巻を灰皿に押しつけながらそう答える。それを聞いたランスは手に持っていた写真を机の上に置き、細かい事など関係無いとばかりに言葉を続ける。
「まあ、とにかく助け出せばいいだけだろ? 報酬は?」
そのランスの問いに、キースがニヤリと笑う。まるで、その質問を待っていましたと言わんばかりの表情だ。
「聞いて驚け! 一人救出で20000GOLD、二人で40000GOLDだ!」
「なんだと、破格値じゃないか! どうしたんだ?」
ランスが驚くのも無理はない。普通、この程度の依頼なら一人発見で1000~2000GOLDが相場になる。だが、キースの口からは、その十倍もの報酬が提示されたのだ。俄然やる気も湧いてくる。
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