第3話 闇との邂逅
-盗賊団アジト 詰め所-
「これは……」
「どうかな?」
「……すまない、無理みたいだ。壁への封印が魔法結界のようなものだったら助け出す事が出来る可能性もあったんだが、どうやら違うらしい……」
「そんなぁ……」
壁にめり込んだ男、ブリティシュが残念そうに声を上げる。洞窟内で出会ったブリティシュから壁から出して欲しいと懇願されたルークは、自身の能力で助け出す事は出来ないものかと念入りに壁を探っていたのだ。だが、ブリティシュを壁に封じ込めているのは呪いの類であるため、ルークの能力での解除は不可能であった。
「おい、そんな変な男は放っておいて先に進むぞ。この靴さえあれば、あんな結界なぞ簡単に越えることが出来る」
「その靴の場所を教えてくれたのはブリティシュなんだから、真剣に考えるのは当然だろう。だが、確かに奥に囚われている娘さんも気になるな……」
ランスが地面を踏みしめる。履いている靴は先程までのものではなく、洞窟内の結界を無効化出来る靴だ。詰め所の脇に置いてあるのをブリティシュから教えて貰ったのだ。その礼も兼ねてなんとか壁から出してやりたかったが、娘の救出も急がねばならない。ルークのその言葉を聞いて、ブリティシュは何かを思い出したかのように口を開く。
「ああ、盗賊たちが攫ってきた娘たちか。多分、一人じゃなくて何人もいるよ」
「なにぃ? 間違いないだろうな?」
「うん。違う声が何回か聞こえてきたし。最初の娘なんかは攫われてきてからかなり経っていると思うから、急いであげた方が良い。僕はまた気長に待つから」
「うむ。こんな中年など放っておいて、可愛い娘たちを救出に行くぞ!」
「そうだな……今は助け出せる方を優先させて貰うとするか」
今ここでブリティシュの救出方法を考えても埒があかない。ブリティシュ自身も、元々あまり期待していなかったのか、脱出への執着心を見せていない。一体どれ程の期間、この壁に囚われていればこのような精神になるのだろうか。部屋を後にするランスに続こうとするルークだったが、最後に一度だけブリティシュを振り返って言葉をかける。
「何か手段が見つかったら、そのときは必ず助けに来る。待っていてくれ」
「うん。ありがとうねー」
去っていくルークの背中を見送りながら、ブリティシュは陽気にそう答える。久しぶりに盗賊以外の人間とまともな話が出来た。それだけで彼には十分であり、別れ際の約束には何の期待もしていなかった。これより数年後、今の男たちと深く関わる事になるなどとは、夢にも思っていなかった。
-盗賊団アジト 最奥の部屋-
「ふへへへ。おら、もっと良い声を上げな!」
「いや……もうやめて……」
少女の悲痛な声が部屋に響き渡る。洞窟の最深部にある部屋の中では、40才前後と思われる無精髭の男が少女を犯していた。この男が盗賊たちのリーダーであり、名前をライハルトと言う。周りには部下と思われる盗賊が五人。その内の四人も他の少女たちを犯している最中であった。目を覆いたくなるような光景の中、その乱交に参加していない唯一の盗賊は男たちを冷ややかな目で見ていた。彼女は、この盗賊団唯一の女性構成員だ。
「これだから盗賊家業はやめられねぇな。お前らも楽しんでいるか?」
「ええ、最高ですぜリーダー。かぎりない明日戦闘団に入って良かったですぜ」
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