波長…
だからこそ私は思うのだ……自分と同じ……いやそれ以上の駄目な存在の近くに居ればどれ程に安心して自分を偽ること無く生きることが出来るか。
我が子と会わせ、その生き方を学ばせてあげられたらどれだけ良いか。
才能に溢れたあの男とは違って、持つ欠陥を制御する気も無い彼の持つ駄目っぷりから容易に感じ取れる安心感を常に隣で得られるとするならと、やはり考えるだけで心が踊る。
あぁ……彼が人間では無く悪魔であり、それでいてあの戦争の時点で出会えていたなら私は例え脅されてもあの男の子種で孕む事はなかった。
恐らく嫌がられてもこの男の子の傍らに付いていたかもしれない……。
それほどまでに、人間でありながら異質で惹かれ過ぎる彼の本質は、たった1度で私の価値観をぶっ飛ばしてくれたのと同時に初めて自覚した。
「一目惚れって、本当にあったのね……フフ」
「グレイフィア? さっきから貴女は何を――」
「何でもありませんよリアスお嬢様……。それでは皆様……個人的な事ですが『御武運を。』」
おっといけない。今の私はグレモリー家のメイドのグレイフィアであって、グレイフィア・ルキフグスではない。
まだ仮面を被らなければならない……。
そしてその仮面を剥がしてくれるのはもう決まった。
「一誠……お前の持つ訳のわからない力は使えるんだろうな?」
「……。誰かが怪我をしたら回復させれば良いんだろ?」
「ああそうだ。
それとだが、もしも俺等を裏切ったらあの堕天使は――」
「はいはい。ミッテルトちゃんが無事だと保証されてる内はどんどん俺を使い潰してくれや……」
双子の兄……確か赤龍帝の兵藤誠八だったかに鬱陶しそうな顔をしている兵藤一誠……貴方に私が成し得なかった『全てを一緒くたにかき混ぜて台無しにする』という所業を達成して貰い、私に付けられた仮面と枷を無理矢理剥がして貰う。
あの悪平等の堕天使は彼を好いている様だが……フフ、真に波長が合うのは恐らく―――――
「っ!? ……なんだ?」
「……。(フフフフ……色仕掛けで引っ掛かるかしら?)」
私だ。
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