アーシアさんルート……その後編
大体好きになってもその恋が叶う事なんて無い。
だって俺は過負荷で周りを不幸にし、好きになった人も俺から離れて行く……もしくは兄者に靡くので俺は恋というものが実った試しは皆無だった。
だから人を好きになるのは極力止めてたし、人付き合いも零となった。
けれど、最後に好きになったあの子は……多分俺以上に不幸な星の下に存在しており、俺よりも悲惨な目に遇った。
最近知った悪魔って奴を治療してしまったばかりに異端者扱いされて居場所を追い出され、それに漬け込んだ堕天使が彼女を騙し、彼女の中に在る力を抜き取って殺されるなんて俺なんて目じゃないレベルの不幸っぷりを彼女は味わった。
だから俺は彼女を助ける気になった。
弱い奴と不幸な奴の味方になると昔決めた通りに、俺は彼女を利用しようとする悪魔……兄者含めての前に立ち、彼女を奪い取ってやった。
俺という人間が現れて若干驚く悪魔達に俺は言った。
『教えてやるよ化物共……。
過負荷を相手に真正面から馬鹿正直に押さえ付けようとする愚かさを』
右手に杭を、左手に釘を持ち、どう見ても返り討ちにされるのがオチだと分かりきった状況の最中、俺は俺の持つ過負荷を駆使して精一杯戦った――いや、逃げ切った……彼女と共に。
何度殺され掛けても立ち上がり、笑いながら最後は彼女を奪って逃げてやった。
「へ、へへ……初めて勝ったぞ……!」
それは誰が何と言おうと俺にとっては初めての勝利であり、彼女を抱えながら町外れの森へと逃げ込んだ俺は、冷たくなってる彼女の身体を抱えたまま座り込む。
先の戦闘で嫌というほど受けた外傷は既に逃げた為に存在しない。
後は、この子を……アーシアちゃんを……。
「待ってろアーシアちゃん……死後の世界とやらからキミを逃避させるから……」
冷たいアーシアちゃんの身体をそっと地面に置いた俺は、その頬に触れながら小さく自分の中にある捩れを発動させる。
幻実逃否。
降り掛かる現実から、自分にとって都合の良い幻実へと逃げる俺の過負荷。
世界に散らばる人間の持つ神器とは違う、現状この世に俺しか発現していないらしいスキル。
これを使えばアーシアちゃんが死んだという現実からも逃げ、死んでない事に出来る。
だから俺は躊躇無しに使う……他人に対して初めて己のスキルを。
「幻実逃否……キミが死んだという現実から逃げる……!」
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