IS学園
あの後、船内にいた姉さんも因幡を展開して合流し、私たちは千冬さんたちによって最も近い自衛隊の駐屯地へと連れられた。
そこから大型のヘリに乗せられて、今は移動している最中である。ヘリの中には私たち4人と操縦士、それに千冬さんしかいない。
「ねぇ、これってどこに向かっているのかしら……?」
右隣に座る鈴が窓の外を眺めながら、私に問いかける。
私もつられて外の景色を見たが、一時間前に眺めた時とほぼ同じでただひたすら海面が広がっているだけだった。
「……恐らくはIS委員会の日本支部だろうな」
数秒だけ考えてから、答えを口にする。
ISのコアは貴重なものであり、それが未知の専用機と一緒に突如現れたのだ。
おまけに操縦者である鈴は、中国生まれの日本育ちときている。これでは非情にややこしいことになるのは明らかだろう。
だから国際組織であるIS委員会が一度、このISに関する処遇を決めるはず。そう私は考えたのだ。
セシリアも同じ考えのようで、私の言葉を聞いて頷いていた。
「篠ノ之、私たちが向かっているのはIS委員会日本支部ではない」
だが、千冬さんの一言であっさりと否定されてしまう。
「敵はIS委員会の中にもいる可能性があるからね、できるだけ盗み聞きされてないところのほうが箒ちゃんたちもいいでしょ?」
すかさず、姉さんの補足説明が入る。確かに委員会の人間が敵にいるならば、今まで簡単に待ち伏せされたのも頷ける。
しかし、それならどこへとこのヘリは向かっているのだろうか。
「箒さん。恐らくあそこに向かっているのではないかと」
セシリアが窓の外のある一点を指差しつつ、私たちに向けて言う。
そこには大きな人工島が浮かんでいて、近未来的な外観をした建物がいくつも立ち並んでいた。
「あそこって……IS学園!?」
指差した先を眺めて、鈴が驚きの声を上げた。
鈴の言うとおり、そこにあったのはIS学園。世界で唯一のISに関する教育機関にして、倍率1万倍をゆうに超える超エリート校。
そして、春から私たちが通う高校でもある。
「IS学園はIS委員会が管理する学校ですが、内部に不審な人物が入らないよう徹底されてますからね……。確かに、盗聴のリスクを考えたら最善の選択ですわ」
セシリアの言葉を聞き、私も納得する。確かに日本国内、いや、世界中どこを見渡しても、ここ以上に安心して話せる場所はそうそうないだろう。
そう考えているうちにヘリは学園のすぐ上にまで到着し、着陸の準備を始めたのだった。
◆◆◆
学園に降り立ってすぐ、姉さんは甲龍の待機形態――どんな形なのか、私は知らないが――と例のコアの入った袋を抱えて、校舎に隣接した第一整備室に向かっていった。
その背中を見送ってから、私たちは正反対の方へ向かって石畳の上を移動していく。
「実技試験の時も来たけどさ、やっぱここって広いわよね」
鈴が歩きながら口にした言葉に、私は頷く。
IS学園は人工島をまるまる一つ使用しているので、他の学校とは比べものにならないほどの敷地面積を誇っているのだ。
「着いたぞ、この建物だ」
校舎から離れた場所で足を止めると、千冬さんは目の前にある比較的大きな建物を指差しながら言う。
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