入学
「ああいや、なんでもないんだ」
そう、もう一回の経験。それは一年前にセシリアと初めて出会った時の事だった。
なぜか目を合わせた瞬間から初対面だとは全く思えず、それどころか腐れ縁みたいな感覚すら覚えたのだ。困惑した気持ちのまま握手したのを、今でも鮮明に憶えている。
既視感の度合いで言えば、更識のときや今回よりセシリアの時のほうがひどかったと断言できた。
「全員揃ってるナ? それじゃあホームルームを始めるサね。ほらそこ、突っ立ってないでさっさと席に着くのサ」
銀髪が席に着いてすぐ、教室に隻眼隻腕の女性――アーリィさんが入ってくる。
さすがにこの間のように目立つ赤い着物を着ておらず、同じ色のジャージを着ていた。格好から察するに実技担当なのだろう。
「私が諸君の担任を務めることになった『嵐のアーリィ』ことアリーシャ・ジョセスターフなのサ。気軽にアーリィと呼んでくれてかまわないサね。よろしくナ♪」
教壇に立ち、マイペースに自己紹介を始めるアーリィさん。
もっとも、生徒の大半は唖然としたまま固まったままだった――まぁ、まさか世界第二位の操縦者が担任になるなんて、予想できるほうがおかしいのだが。
「じゃあ早速、自己紹介してもらおうかナ。そうだな……出席番号順でいいサね。それじゃ、お願いするのサ」
出席番号一番の相川清香さんが立ち上がり、自己紹介が開始される。もっとも女性にしか操縦できず、かつ数も限られているIS界隈は意外と狭い。それが同じ国の同じ年頃となるとなおさらだ。大抵どこかのイベントや実機の試乗、進学のための塾などで顔を合わせている。
したがって日本人の多い一組で、私の知らない顔は数人しかいなかった――もちろん、その中にはさっきの銀髪も含まれている。
「イギリス代表候補生のセシリア・オルコットです。気軽にセシリア、と呼んで頂いてかまいませんわ、どうぞよろしくお願いしますわね」
「篠ノ之箒だ。日本代表候補生で、専用機も持っている。姉は開発者の篠ノ之束だが、私個人はただのIS操縦者に過ぎない。みんな、よろしく頼む」
「凰鈴音よ、実家はモノレールの駅を降りてすぐの商店街にある中華料理屋なんだけど、そっちもよろしくねっ♪」
粛々と自己紹介は進んでいき、私たち三人もそれぞれの分を滞りなく済ませておく。
ちなみに鈴は専用機について紹介しなかったが、これは最初の実技の時間に説明を入れるらしく、それについては触れないようにと釘を刺されているからだ。
さて、何事もなく自己紹介はさらに進み、あの銀髪の少女が締めを飾る事となった。すっと立ち上がり、直立不動のまま凛とした声を彼女は発する。
「ドイツ代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。この学校に来たのは新型機の試験運用のためだ」
――ドイツの代表候補、だと……!?
立つや否やいきなり銀髪――ラウラの放った単語に、思わず困惑してしまう。
ドイツと前に試合をした時は、確かアンナとかいう金髪の少女が向こうの代表候補生として戦ったはずだし、もちろん観客席や控えの選手にもこんな一度見たら忘れられない外見の奴はいなかった。
じゃあ一体、このラウラというのはどこから……?
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