ハーメルン
篠ノ之箒は想い人の夢を見るか
入学

 
「今年の二月まではIS特殊部隊『黒ウサギ隊(シュヴァルツェア・ハーゼ)』の隊長を務めていた。技量ならばそこらのIS乗りには負けない自信はある」
「――ッ!」

 ラウラの口から放たれた「IS特殊部隊」という言葉。それに思わず私は絶句する。
 IS特殊部隊というのは読んで字のごとく、軍のIS部隊のことを指す。アラスカ条約との兼ね合いから、その役割は専ら国防にのみ向けられているエリート中のエリートだ。その隊長ともなると、奴――ラウラ自身が言った通り、並みのIS乗りなどとは比較にならない実力者ということになる。
 そんな国防の要の一人が学園に来るなど異例中の異例。定石破りにもほどがあるといえた。

 さらに言えば、特殊部隊の人間ならば何故、私たちとの試合に出さなかったのだろうか。
 通常そういった部隊の人間はより多くの研鑽を積ませるべく、対外試合や合同演習に引っ張り出される。
 現に私も自国他国を問わずIS特殊部隊の人間とは戦ってきたし、代表候補生出ない相手とも試合を組まされたこともある。
 

「以上だ」

 私が悩んでいるうちに、ラウラは自己紹介を終えて席に着く。これで全員分が終了し、そのままアーリィさんは授業を開始する。
 もっとも、私の頭の中には授業内容など入ってこなかったのだが。

◆◆◆

 一日中悶々と悩んでいても、時間というものは勝手に過ぎ去っていくものである。私が気付いた時には、もう放課後だった。

「明日からは、こんな事にはならないようにしないとな……」

 ぼんやりと黒板の方をみながら決意する。結局、今日の授業内容は一切頭の中に入ってきてはいなかった。
 恐らく初回な以上は復習程度の内容だったのだろう。そのことは不幸中の幸いだったといえなくもない。とはいえ、一応あとで鈴からノートを借りるつもりではあるのだが。

「今日はこれからどうする?」

 別に教室に長居する必要もないので立ち上がると、ちょうど鈴とセシリアがこっちの方へと向かってきた。

「他の生徒はどうするって言っていた?」
「訓練機の貸し出し申請を昼休みのうちに済ませた方はアリーナへ、その他の方は部活見学が大勢を占めているといった感じですわね」
「そうか……」
「箒はやっぱ、剣道部に入るの?」
「さぁ、まだ何も決めていないからな……」

 中学の時は全国大会で優勝こそしたものの、結局代表候補生の仕事が忙しくて半ば幽霊部員だった――もっとも、学校そのものもかなりの頻度で休んでいたのだが。
 この学園ならばそんな事にはならない可能性も高いが、どうするか……剣道は好きなのは間違いないが、今はいろいろと立て込んでいるわけだし……。

「まぁとにかく、一度わたくし達も見てまわりましょうか」
「そうだな」

 そう言って三人で教室を出た、その時だった。
 入口のすぐ近くの廊下に立っていた銀髪の少女の声が、突如私の耳朶を打つ。

「おい、篠ノ之箒。少しいいか?」

 こうして私は、ラウラ・ボーデヴィッヒと初めて言葉を交わすこととなった。

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