戦いの日(中)
「ゴーレムではない、のか」
眼前のISを見据えつつ、自分に言い聞かせるよう小さく囁く。
襲撃者のISは色こそかつて戦った無人機と同じく、まるで夜闇の如き黒。もっとも、そこ以外に共通点など一切ないのだが。
あいつのように無骨な外観の大型機というわけではなく、せいぜい私たちより一回り大きいだけ。むしろ、形状そのものは非常にスマートだといえる。
――というより、そもそも私はその外観に見覚えがあった。
「暮桜……」
思わず口から漏れたのは、織斑千冬の愛機たるISの名。
そう、その襲撃者は暮桜に酷似してた――いや、酷似というのは正確ではないだろう。なにせ、色以外は全く同一なのだから。
「チッ」
知らず知らずのうちに、目の前の光景に舌打ちする。
どうやら連中は何らかの手段で、千冬さんと同等クラスの戦力を補充することに成功したみたいだ。
ここまで早く解決方法を見つけるとは、流石に想定できるわけがなかった。
しかも最悪なことに、目の前の敵からは……。
「箒さん、この表示は……」
セシリアの掠れる声に無言で頷き、ちらりと機体横に投影させておいたウィンドウを一瞥する。
そこにはでかでかと「生体反応あり」の赤文字が輝いていた。
「……慎重に、戦う必要がありそうだな」
中に入っているのがどこのだれかなど、あいにく見当はつかない。
だが、殺すのはなるべく避けておきたかった。
もし敵が入っていたのならば、捕まえることができれば有用な情報を吐かす事が出来るはずだ。
いっぽう、無関係の人間が無理やり入れさせられている――奴らならそれくらいやりかねん――可能性もある。もしそうならば、それこそ殺せば大変な事になる。
「やれやれ……偽者とはいえ、ブリュンヒルデ相手に手心を加えて戦えと? 無茶ですわね」
「それは重々承知なのだが……やるしかなかろう?」
セシリアの軽口に合わせ、こっちも軽口を返す。そうして少しばかり心を平静に戻してから、より一層険しい目で敵ISを睨み据える。
こっちの所作に反応してか、敵もその手に握っている大型ブレード――単一仕様能力までは再現されていないようだ。そこは不幸中の幸いと言えなくもない――を構え直した。
「では――いきますっ!」
その掛け声とともに、セシリアはスターライトmk-Ⅲによるけん制を行い、私は打鉄を一気に加速させる。
「はぁぁぁぁっ!」
接敵し、掛け声とともに刀を振り下ろす。それと同時に、敵もそれを迎え撃つべく剣を向け、ふたつがインパクトしようとする。
その刹那、私はわざと近接ブレードを量子格納させると同時に、敵の攻撃を避けつつ前進する。
迎撃対象がいなくなったことによって敵の剣は空を切ってしまい、僅かながらも隙ができる。
無論、そんな大きなチャンスを見逃すわけにはいかない。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/5
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク