香港事変・後
恐怖から解放された安堵と、助けられたことへの喜び。それにさっきまでの状況を落ち着いて思い返せるようになったからそこの恐怖感。
それらがブレンドされたなんとも形容しがたい顔で、鈴は私に頭を下げる。
「いいんだ、鈴。お前の命が無事ならそれで……そういえばお前、ブレスレットはどうしたんだ?」
私の質問に、鈴は指をさすことで答える。
視線をその先に移すと、木の枝に引っ掛ける形でブレスレットがあった。あんなところにあったのか……。
私はゆっくりとそっちへと向かうとブレスレットを取り、鈴に手渡す。
「あいつ、ここに着くなりすごい表情でね、あたしのブレスレットを奪っていったのよ……何だったのかしら?」
きょとんとした表情で鈴は呟くが、なぜ奴が「温泉街のお土産」に過ぎないブレスレットを奪い取ったのかなど分からなかった。
『箒ちゃん、お疲れ様! 今IS委員会の中国支部に通報したから、もう少ししたら来ると思う。それまであいつの監視よろしくね』
姉さんの通信が入ると同時に、サイレンの音が聞こえてくる。どうやらもうIS委員会の人たちは近くにまで来ているようだった。
ふぅ、これでやっと一安心、だな……。
「ちょっと箒、箒ぃ!」
視界がぼやけ、意識が徐々に遠のいていく。激戦の後の疲れが安堵とともに一気に押し寄せ、もはや立っているのもつらかった。
結局このまま私は意識を失ってしまい、次に目を覚ましたのは飛行機の中でだった……。
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