想いを、あなたへ
四天王と名乗る、見たこともない敵の新型機四体。
そのうちの一機であり、優奈の姉――神崎零の偽骸虚兵の駆る、ダーク・ルプスの強化型のような機体。
あまりにもえげつない姉妹対決が、目に飛び込んでいく。
「優奈ぁッ!」
確かに神崎優奈という少女は、あまりよく知っている相手だったとはいえない。
だが、一緒に戦った仲間がこんな風に外道の手にかかる光景は、とてもじゃないが見ていられなかった。
だから、私はいてもたってもいられず叫んでしまった。
「くそ……また、またこうなのか!?」
まだ少し疲労感の残る中、悔しさに歯噛みしながら呟く。
打鉄は、今この場にない。
紅椿を意識の力で展開することも考えたが、とうていもういちどは無理だろう。自分が一番、その事についてはよく分かっていた。
つまり、専用機はいま私の手にはなく。
戦うなんて、とてもじゃないが不可能であった。
「いつだって……いつだって、そうだ!」
悔しさは勝手に口を動かしていき、気づけば叫んでいた。
そう、いつだって私は戦いたいのに、戦えない。
前の世界のクラス対抗戦の時に、初めてゴーレムが襲ってきたとき。専用機がないから戦えなかった。
学年別タッグマッチ、ラウラがVTに捕らわれたとき。すでに打鉄のシールドエネルギーが尽きていて戦闘続行できなかった。
最終作戦の際、鈴が目の前で殺されていくのを眺めていたとき。花鳥風月を使っていたために、指のひとつも動かせなかった。
そして――先ほどまで、奴が奪い取った脱出艇の中で捕らわれていた時!
いつだって、いつだってそうだ!
みんなが苦しむ姿を見たくないのに! 私だって戦いたいのに!
それなのに、置いてけぼりにされてしまう!
「紅椿さえ、あれば……ッ!」
悔しさに思わず、口に出してしまった――刹那。
目に飛び込んできたのは、目の前でISを纏っている楯無さんの姿。
槍を構えて警戒態勢を怠らないあの人の姿を見た途端、疑念は、確信へと変わっていった。
「いや……紅椿は、ここに、ある……」
この世界にはないはずのミステリアス・レイディを、同じくこの世界ではロシア代表でもなんでもない楯無さんが装備している。
それの意味することは、ただ一つ。
一夏はこの世界に、かつての私たちが愛機としていたISを持ち込んでいる!
そう思った瞬間、気づけば私は詰め寄っていっていた――私たちの世界で、最初に見つかった男性操縦者の少年のもとへと。
「一夏、私の専用機を……紅椿をもっているだろう!?」
「……持っていたら、なんだって言うんだ?」
「こっちに渡せ!」
ビルの屋上のコンクリートの上で横になったまま、目を覚まさないままの鈴。
病に伏せった身体に鞭打ち、今も槍を構えて私たちを守ってくれている楯無さん。
間違いなく一夏が出どころの専用機を持っている存在達に視線を移してから、詰問する。
どう考えても都合よく、紅椿だけ持っていない――そんな馬鹿な事はないだろう。
「――そんなものは、持ってはいない」
「嘘だッ!」
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