ハーメルン
篠ノ之箒は想い人の夢を見るか
奇跡、今悲劇を超えて

「悪いね一夏、箒! ちょっと理由ができてさ、あのドラゴンは私が頂かせてもらうぜ!」
「神崎優奈! テメェはすでに敗北への階段を上り始めている!」
「へぇ……気取ってる言い回しなんかして。ポエムでも始めちゃった? 安崎君?」

 理由というのが何なのかは分からないし、至高龍は超強敵である以上、倒せるのならば誰でもいいとすでに思ってはいた。
 だが、一式の放った言葉も、決して間違いではないのだ。
 なにせ至高龍にダメージを与えてしまったという事は、あの能力の発動。その権利を与えてしまったのだから。

「覇王断罪、発動!」
破壊魔鏡(ダイクロイックミラー)ァァァッ!」

 案の定一式は発動を宣言。アクシアへと与えたダメージの二倍の衝撃が迫るはずだったが、その直前。
 優奈は龍の翼を模した非固定部位、その先端のクリアパーツからホワイトウィングと同じ力を発動。奴の作った眷属機同様に単一仕様能力を無力化し、さらに反撃として衝撃波が覇王断罪の発生部へと迫る。
 そして。

「そこが、発生源だったのか……!」
「よし……これで至高龍の防壁は、全て破壊したッ!」
「つまりあいつは、もうただのデカいだけのデクの坊ってわけよ!」

 至高龍の頭部。
 その額にある群青色のクリスタルを、粉々に打ち砕いた!

「この覇王狼龍はお姉ちゃんの作った全ての機体の結集体! あんたなんかに負けるほど弱くなんか、ないッッッ!」

 堂々と宣言しつつ、優奈は背部キャノンを展開、至高龍めがけて発射。ドラゴンヘッドこそ破壊できなかったものの、砲口と片目をつぶすことには成功する。

 これなら――と、思った矢先の出来事であった。

「クククッ……姉妹揃って、絶望の扉を開けるのが趣味とはなァ……」

 覇王断罪を無力化されてから、なすがままにされていた一式。
 しかし、砲口を潰された途端に、なぜか余裕たっぷりの表情を浮かべるとそんなことを口走る。
 何が、そんなにおかしい……?

「何が言いたい?」
「あんたの至高龍は、ただの砲台じゃない、もう」

 一夏が問い返し、優奈がそう言うが実際その通りだ。
 もはや断罪も障壁もなく、先ほどからこちらの攻撃は通り放題となっている。
 厄介な点は多すぎるビーム砲くらいなものだが、それさえもなんとかならない訳では決してない。極論、先ほどのアーリィ先生のように接近し叩けば無力化できる。

 なのに、あの余裕は何なんだ――!?

「確かに、テメェらの言う通りだ。もうデクの坊さ……()()()()()()

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