貴族少女とサムライガール
「え、あ……は、はい」
「それじゃあ箒さん、アリーナの方で試運転と参りましょうか。借りられる時間も限られてますし、明日の準備もありますし」
セシリアのその言葉に頷いた私は、打鉄正宗に乗り込む。
どうやらフィッティングに関しては原型機のデータを使いまわしているらしく、その必要はなかったらしい。機体はすぐさま私に馴染み、起動した。
「では……篠ノ之箒、打鉄正宗、出る!」
カタパルトに鉄の脚をひっかけながら勢いよく言うと、私はアリーナの中へと飛び出した。
◆◆◆
打鉄正宗は姉さんの言う通り、私に馴染む形に仕上がっていた。特に反応速度の向上がめざましく、なめらかに動くことができた。これならば、少しは今後の戦いも優位に運べるというものだろう。
少なくとも無人機とは互角以上に戦えるような気はする。気のせいでなければいいのだがな……。
その翌朝。ロンドン駅から午前8時に出る列車に乗り、私たちはイギリス北部のIS工場跡地へと向かった。
「到着するまで、あとどれ位かかるんだっけ?」
ミネラルウォーターの入ったペットボトルを手に取るついでに、鈴が対面に座るセシリアに問う。
「そうですわね……だいたい二時間でしょうか」
腕時計をちらっと確認しつつ、セシリアが答える。ちょうどいい、まだまだ時間はあるようだ。
到着までに例の「夢の中の男」について、景色でも見ながら最終確認をしよう。そう決めた私は、視線を窓の外に向けた。
外はまるで洋画の一場面のような平野が続いており、代わり映えのしない光景が続いている。
――と、思ったのだが。
「あれは……! 無人機か!?」
左上にごく小さな、まるで人のような形をした黒点がいくつか浮かんでいるのを発見した私は慌ててセンサー部だけを部分展開。そのまま視界を限界までズームして確認する。
案の定、それは温泉街で私たちを襲った無人機だった。しかも今回はあの時とは違い、一機だけではない。なんと三機もいる。
「みんな、無人機が現れた! 私はこれから迎撃に向かう!」
早口で捲し立てつつ、窓を勢いよく開け放つ。もはや一刻の猶予もない。
窓が開閉可能なタイプだったのは不幸中の幸いというものだろう。
「お待ちになって箒さん、わたくしも加勢いたしますわ」
私が邪魔にならない部分だけ装甲を展開し、窓の淵に足をかけた時。セシリアが一歩前に出て申し出てくる。
「ああ、そうしてもらえると助かる! では……行くぞ!」
「はいな!」
身を乗り出すのと同時に懐にある銀色の鈴に強く意識を向けて打鉄正宗を展開。そのまま私は、敵無人機めがけ天高く飛翔した。
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