第13話 ハーレム主人公なんて××ばいいんだぁぁぁ!!!
カチ…パチ…カチ…
夕食後、部屋に帰ってきた俺たちはそれぞれ自分のしたいことをしている。俺はなんとなく気分でジョジョを一部から読み返し、簪は夕食前と同じようにキーボードを叩いている。しかし、あまり集中していないのかキーボードを叩く速度が明らかに遅い。ふたりとも無言なため、ゆっくりとしたタイプ音が部屋に響いている。
「………あ~、あれだな。ずっとマンガ読みっぱなしって意外と疲れるな」
「………」
俺の言葉に簪は無言。もしかしたら聞こえていないのかもしれない。
「俺、ちょっと自販機で飲み物買ってくるよ。奢るよ。何がいい?」
「…………」
無言。これ…余計なお世話しすぎて嫌われたかな?やっぱおせっかいは一夏みたいな主人公タイプの専売特許だしな。主人公の友人ポジションの俺には無理だったか……。
「……私のは…何か果物のジュースで」
あ、よかった。ちゃんと返事してもらえた。
「おう。じゃあなんかよさそうなの買って来るわ」
「……うん」
簪の返事を聞きつつ俺は近くの自販機へ。と――
「あっ……」
「おう……」
自販機までやって来た俺が見たのは、横のベンチに座っている鈴だった。見たとこ落ち込んでいるように見える。今朝やお昼に見た元気さがない。
ピッ、ガコンッ。
「鈴。ほれ」
「えっ?」
俺は買った缶、コーヒー(ブラック)を鈴に投げる。咄嗟のことにも流石は代表候補生。落とさずしっかりと缶をキャッチした。
「ちょっと、私ブラック飲めないんだけど」
「え?マジで?ごっめ~ん。代表候補生なんだし飲めると思ってた。見た目通り舌までおこちゃまだったんだね~wwww」
「なによ!いいわよ、飲んでやるわよ!!」
怒りながらプシュッと缶のプルタブを開ける鈴。俺もコーラ(ペットボトル)を買って鈴の隣に座る。
「う~、苦い~」
横で一口飲んでべーと舌を出している鈴を俺はじっと見る。
「……何よ」
「泣くほど苦かったか?」
「え?」
俺の言葉に鈴は自分の頬に手を当てる。そこには数粒の雫が流れ落ちている。
「やっぱり、鈴ちゃんはおこちゃまだね~」
「誰がおこちゃまよ!コーヒーが飲めなくて泣いたんじゃないわよ!これは……」
そこで鈴が黙る。
「こういうのは誰かに話した方がすっきりするぜ。何があったかは知らんがな。……まあどうせ一夏がらみだろうけどな」
「なんでわかるのよ!」
「マジか!テキトーに言ったら当たってしまった!」
「テキトーだったの!?」
「テキトーだよ。あの出会うもの皆惚れさせそうな、THE主人公な奴がかかわってる気がしただけだ。今までの二人のやりとりを見ていたら鈴は一夏のこと好きそうだけど、一夏は仲のいい友人くらいにしか思ってなさそうだったんでな」
「…………」
『アンタはエスパーか!?』みたいな顔で俺を見る鈴。ふっ、だてにアニメや漫画を見てないさ。
「で?何かあったのか?」
「……………」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク