第4話 灰色の青春と漢の魂
「うう………」
隣の席で一夏が項垂れている。でも俺はそれを気にする余裕はない。なぜなら……
「あー………」
頭を抱えて肘ついて自分の席に座る俺。気分的に言えば「へたこいたー」といった感じだろうか。
「ああ、織斑君、井口君。まだ教室にいたんですね。よかったです」
「はい?」
山田先生が現れたが、正直俺にはそれも気にする余裕はない。
「ど、どうしたんですか井口君」
「はっはっはー。なんでもありませんよ山田先生。強いて言うなら俺の青春が終わっただけですよ」
「は、はあ……」
俺の言葉に山田先生が首を傾げている。
「何でもないです。で?どうしたんですか山田先生」
「あっ。えっとですね、二人の寮の部屋が決まりました」
へー。ちょっとの間は政府の用意したホテルから通うって話だったはずだけど。
「俺らの部屋、決まってないんじゃなかったですか?前に聞いた話だと、一週間は自宅から通学してもらうって話でしたけど」
「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理矢理変更したらしいです。ただ、とにかく寮に入れることを最優先にしたみたいで、お二人は別々の部屋になってしまったんです」
「え?てことはルームメイトは女子ですか?大丈夫なんですか?」
「一ヶ月もすれば部屋割りの調整もできると思うので」
俺はいいけど、その子はいいのかな。同室が俺みたいなオタク野郎で。
「部屋はわかりましたけど、荷物は一回家に帰らないと準備できないですし、今日はもう帰っていいですか?」
「俺もホテル戻らないと」
「あ、いえ、荷物なら――」
「私が手配しておいてやった。ありがたく思え」
そう言いながら織斑先生が教室にやってきた。今頭の中でダースベイダーのテーマが流れた。しかも超似合う。
「「ど、どうもありがとうございます……」」
「まあ、井口はホテルにあったものを全部移動させただけだし、織斑の方も生活必需品だけだがな。着替えと、携帯電話の充電器があればいいだろう」
うっわ、大雑把ー。
「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は六時から七時、寮の一年生用食堂で取ってください。ちなみに各部屋にシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年毎に使える時間が違いますけど……えっと、その、お二人は今のところ使えません」
「え、なんでですか?」
「パンチッ!」
「あてっ」
一夏の後頭部を軽く殴る。
「何するんだよ」
「いや、だって、同年代の女子と一緒に風呂に入りたいとか、思ってても口に出すなよ」
「あー……」
俺の言葉に一夏が後頭部を撫でながら気付いたようだ。
「えっ、織斑君、女の子とお風呂に入りたいんですか!?だっ、ダメですよ!」
「い、いや、入りたくないです」
一夏が全力で首を振ってる。
「ええっ?女の子に興味がないんですか!?そ、それはそれで問題のような……」
山田先生の言葉に教室に集まっていた女子たちが沸き立つ。
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