第十話
カタカタっと。これでよし。これで287期ハンター試験申し込み終了だ。あ、もう通知が来た。ええっと、試験会場はザバン市か……これだけしか書いてない。後は自分で調べろってことか。毎年何百万人も受験者がいるんだ。それぐらい調べられない者にハンターになる資格はないって事ね。
私が1999年に行なわれるハンター試験に参加しようと思ったのは、確認のためだ。何の確認かと言うと、私の他にこの世界に来た人たちはいるのか、という確認だ。今まであまり考えてなかったけど、世界を巡りながらよくよく考えてみたらその可能性はある。
その確認がもっともしやすいのがこのハンター試験だろう。
……今さら元の世界に帰りたいとは思わない。私はここで死に、ここで生まれ変わったのだから。しかし気にならないと言えば嘘になる。もしいたら会って話をしてみたい気持ちはある。
とりあえずザバン市を調べてみるか。ええと場所は……ここからだと飛行船で向かうのが一番早いかな? さっそくチケットの用意をしますか。
『ザバン市ハンター試験会場直行便・ハンター試験受験者専用飛行船はまもなく出航いたします。搭乗されるお客様は……』
なんかチケットを予約して空港で待ってたらそんなアナウンスが流れた。
はて? 試験会場直行便なんてそんな便利なのがあるの? 周りを見渡すと明らかに堅気の人間じゃない人たちがぞろぞろと列をなして飛行船へと進んでいる。……いいのかな? なんか簡単すぎる気がするんだけど。
そう思って躊躇していると、何人かは残ってボソボソ話している……聞き耳立てよう。
「……ルーキーか。こんな単純な罠に引っ掛かるなんてな」
「全くだ。試験会場直行便なんて便利なものがあったら苦労はしねえよ」
「まあそう言うなよ。ライバルは少ないに越した事はないだろ?」
……まあ、当然引っかかるわけがありませんよ、ええ。さすが私。この程度の罠見抜けなくて何が風間流か!
……嘘じゃないぞ。引っ掛かってないんだから。
飛行船が出航してから10分ほど待っていると再びアナウンスが流れた。
『ハンター試験受験者の方たちは、5分以内に空港入り口へと集合してください。繰り返します……』
おお、こっちは本物の案内の様だ。さっきの人たちも入り口へ向かっている。……2回目の引っ掛けはないよな?
入り口で待つ事3分。正面に1台のバスがやって来て、バスからガイドが降りてきた。
「お待たせいたしました。このバスはただいまからトネリ港へと向かいます。トネリ港には試験会場最寄の港・ドーレ港へ向けて出航する船があります。ハンター試験受験者の方は空港のチケットをこちらにお渡しの上で、バスにご乗車下さい」
良かった。残って正解だったか。……でも実はこれも罠だって事はないよね? さっきの罠の後だと穿った物の見方をしてしまうな。実はこのバスはトネリ港には着かないとか?
……ありそうだ。トネリ港はここから10㎞ほどの距離にある港。走っていっても間に合うかな? トネリ港に船があること自体が嘘だったら仕方ないけど、それだったら乗っても同じ事。だったら乗らずに走っていったらもしバスが罠だった場合は回避できる。
とりあえず確認してみよう。
「すいません。トネリ港から船が出るのは何時頃でしょうか?」
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