ハーメルン
どうしてこうなった?
第十六話

 ここがネテロ会長が仰った場所。今期ハンター試験の最終試験会場ですか。普段は審査委員会が経営するホテルのようですが、今は最終試験の為に貸切になっているようですね。

「現在当ホテルは貸切の為通常の営業は行っておりません。真に申し訳ありませんが、お引き取りを……」
「私はリィーナ=ロックベルト。ネテロ会長より私が来訪した時の通達が来ているはずですが……伝わっておりませんか?」

 身分証明証、ハンターライセンスを渡し、確認を促す。もしあのじじいが伝え忘れていたならどうしてくれようか。浸透掌か? それとも竜巻落とし? いやそれとも――

「大変失礼いたしました。ネテロ会長より話は仰せつかっております。まだ会長は到着していませんので、到着までこちらへ――」
「リィーナ!」

 ホテルマンが案内をしようとした矢先の事、聞き覚えのある声がしたので思考を中断し振り向く。

「ビスケ。一体どうしてこちらに?」

 そう。何故ここにビスケがいるのでしょう?

「それはこっちのセリフだわさ! なんであんたがこんな所にいるわさ! あんた約束を忘れてたの!?」

 約束……? ……ああ!!

「そう言えば、3日前はエステの予定の日でしたね」
「……呆れた。ほんとに忘れてたのねあんた。……あのねぇ、あたしだって暇じゃないのよ。それなのにこうして毎月最低1回はあんたの所に出向いてあげてんのに、約束の日に行ったら留守ときた。しかも長期不在の予定を入れて」

 これは……少々怒っていますね。それも致し方ありません。約束を違えたのは私なのですから……色々と思うところがあったとはいえ、約束を破ってしまうのはいただけません……。

「申し訳ありませんビスケ。今回は私の落ち度です……この埋め合わせは必ずしますので、今は許してもらえませんか?」
「……はあ。仕方ないわさ。普段こんなミスをするアンタじゃないモノね。ま、埋め合わせは今度してもらうわ。ちょうど欲しいモノがあったのよね~」
「すみませんねビスケ。……ちなみに予算は1000万ほどにしてくださいね」
「……もう一声。ちょっとした情報屋を雇ってようやく移動先が分かったんだから。それの分も含めてほしいわさ」
「はあ、2000万までですよ?」
「よっしゃ!」

 全く、この子ときたら……2000万くらい軽く持ってるでしょうに。

「それで?」
「はい?」
「なんで約束すっぽかしてこんな所に来たの? ここ審査委員会が経営してるホテルでしょ? これからハンター試験会場に使われるみたいだけど」

 ……まだ根に持ってるみたいですね、約束を忘れていたのを。

「……」
「……?」

 ……そうですね。ビスケも今回の件。リュウショウ先生の件は他人事とは言えないでしょう。彼女もネテロ会長を通じて先生と深く関わりのある人でしたから。
 それに……あの時、リュウショウ先生が亡くなって意気消沈としていた私にずっと寄り添ってくれたビスケになら……話をしてもいいでしょう。

「その説明をするのに立ち話もなんですね。話は部屋についてからにしましょうか」
「それもそうね。と言う訳でそこのあんた。早く部屋まで案内してちょうだい」
「は、いえ、その、こちらの方は?」
「私の連れです。通しても問題はありません。彼女もプロハンターですし」

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