13.ある物語の結末
麻帆良学園にある一軒のカフェテリア。
そこには平凡な顔立ちの黒髪の青年と、今時珍しい丸眼鏡を掛けた中等部の制服を着た女の子が座っていた。彼らの目の前にはコーヒーが二つ。
「・・・で?つい苛々してフェルナンドの顔面を蹴り飛ばしたと?」
「ついカッとなってやった。反省はしていない。
気持ち良かったし、もう二、三発蹴り飛ばしておけば良かったと思ってる。」
「はぁ・・・。
あまり心配を掛けないで下さい。
ふらふらフェルナンドに歩み寄っていった時は、またギアスか何かかと肝を冷やしましたよ。」
「・・・その、心配掛けて悪かったよ。」
「私も蹴っておけばよかったですね。」
「は?」
―――あの後は大変だった。
千雨さんは闇黒闘気を垂れ流してフェルナンドの頭を踏みつけてるし。
エヴァンジェリンさんは借りを返し損なったと不機嫌になるし。
茶々丸さんは何故かチラチラとこちらの様子を伺ってくるし。
ネギ君の怪我と汚れをはさみを使って切り取り、惨劇に関する記憶も切り取る。
あれはまだ精神が十分に熟成していないネギ君には毒でしかない。
彼は私と大橋で会う直前までの事しか覚えていないだろう。
神楽坂明日菜とオコジョ妖精がネギ君を探しにこちらにやって来ると、私と千雨さんは脱兎の如く逃げ出した。
私は身内の千雨さんが巻き込まれたから事態の収拾に乗り出したのだ。
最初から麻帆良での騒動になんか首を突っ込むつもりなんかさらさら無かったし、元々私は身分を詐称している部外者だ。ここで私という存在が学園側に露呈して面倒事に巻き込まれるのは御免である。
千雨さんもこれ以上非常識な世界に関るのは御免だと一緒になって逃げ出した。
―――気絶しているネギ君とフェルナンド、その他諸々の後始末をエヴァンジェリンさんに丸投げして。
全速力でその場を走り去りながら、背中越しのエヴァンジェリンさんの罵詈雑言を聞き流した。
おい貴様らどこに行くんだ。まさか私に事情の説明とか全部押し付ける気じゃないだろうなっておい全速力で走り去るんじゃない!!茶々丸そいつらを捕まえろ!え?嫌?あちら様の不利益になることはしたくない?そんな事を言っている場合って速!?もういない!?ええい!どうするんだ!本当の事を言うわけにもいかんし!この馬鹿の事とかはどう説明すればいいんだ!!ちッ、おい!これで借りは全部チャラだ!!後日ちゃんとした説明をして貰うからな!おい聞いてるか!後で覚えてろよ!!!て、おーい!!!
あーあー聞こえなーい聞こえなーい。
―――あの後は大変だった。
エヴァンジェリンさんが。
今日の朝方、どうやって調べたのかは知らないが、私に茶々丸さんからメールが有った。
内容は簡潔に指定の時間にこのカフェテリアまで来て欲しいとの事だったが、それにしてはやけにスクロールバーが余っている。
バーを一番下まで下げてみると文字が打ってあった。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/8
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク