第十二話:学校にて
翌日の朝。
その日クロンは、いつもより十五分早くに鳴った目覚まし時計によって目を覚ました。
いつも笑みを浮かべている彼もこの時間は眠たげで、目を擦りながら自分の部屋からリビングに移動する。
そこで待っていたのは、母親と彼女が作った朝食。そして今日一日の天気を告げるお天気お姉さんの声だった。
「んみゅぐ……おはよぉママ…」
「おはようクロちゃん。…あら? 今朝は早起きなのね?」
「ん…。今日はちょっと早く……学校行くの…」
そう言うと、母は首を傾げながらも納得したようだった。
恐らく学校の行事か何かの都合なのだろう……と解釈したのだろうが、実際は個人的な理由での早起きだった。
昨日、ソール達との話に出て来た、実力者の少年。その少年に関する情報を、彼はなるべく早いうちから集めたかったのだ。
(授業が始まるまでに、その子の名前とクラスを聞いて……授業中は、作戦を考えて……あふ、眠い)
早朝故に、現時点での士気は低い。しかし、それも束の間の事である事を彼は知っていた。
(何にせよ……いいデュエル日和だね、今日は…)
クロンは朝食を食べながら、荒れそうな一日が始まるのを感じた。
朝食を終え、英気を養った後は、普段と同じ日常が待っている。クロンは学校指定の制服に着替えると、ランドセルを背負って自宅を後にした。
いつもより少しだけ早く見る景色は、日頃よりも少し変わって見える。家の前を通る度に吠えてくる犬が散歩中なのかいなかったり、幼稚園の送迎バスが通っていたり。その目新しい発見を見ているうちに、頭も次第に覚醒してきた。
頭が働くにつれ気力も漲り、自然と闘志も湧いてくる。そんな不思議な感覚のまま通いなれた道を歩き続けるうち、やがて彼の通う学校、「天神将小学校」が見えてきた。
普段は勉強の為に通う場所。しかし今日はそれとは別にもう一つ目的がある。
(さて。情報集めでも始めますか)
クロンは、にやりと不敵な笑みを浮かべて、学業の門を潜った。
早い時間に来た事もあり、まだ校内に人は少ない。廊下で擦れ違う人も無く、自分の教室に到着しても、人はあまりいなかった。
「おはよー、みんな。寒いッスねー」
「あ、クロちゃんだ。おはよー、今日は早いんだねー」
教室内で会話していたクラスメイトの女子が、クロンに顔を向けてにこりと笑う。
クロンはそれに同じく笑顔で応えながら、ランドセルを自分の机に乗せた。
「んふふ、ちょっと訳ありでねー。…あ、そだ。雪ちゃんはデュエルモンスターズやってるんだっけ?」
「うん、決闘者だよー。クロちゃんも最近始めたんだっけ? 今日は決闘盤持ってきてるし、また後でデュエルしようね」
「もちッスよー。ところでさ、この学校に……多分上級生だと思うんだけど、特別強い決闘者がいるって話、聞いた事ありません?」
世間話は程々に、さっそく本題に入った。
少女は唐突な質問に一度首を傾げた後、「うーん」と小さく唸る。
「ちょ…っと聞いた事ないなぁ。上級生の人とお話した事もないし」
「ですかぁ。いえ、ちょっと聞いてみただけなんですけどねー」
申し訳なさそうな顔をするクラスメイトに、クロンはのんびりとした口調で礼を言う。
あまり期待はしていなかったが、やはり上の学年の事をクラスメイトが知っている筈も無いようだ。
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