第十四話:時間を何秒止められる?
デュエルモンスターズのルールでは、各プレイヤーが自分のターンに取れる行動をフェイズ毎に分けている。
「ドローフェイズ」、「スタンバイフェイズ」、「メインフェイズ」、「バトルフェイズ」、そして「エンドフェイズ」の五種である。
更にメインフェイズは二種類に分けられている。バトルフェイズ前に行う《メインフェイズ1》と、バトルフェイズを行った場合にのみ発生する《メインフェイズ2》である。
もしプレイヤーがバトルフェイズを行わなかった場合、メインフェイズ2も発生せず、そのままエンドフェイズに移行し――…そのプレイヤーのターンは終了する。
例え他のプレイヤーのカードによってバトルフェイズをスキップさせられたとしても、同様である。
それがデュエルモンスターズにおける一ターンの流れである。
ではもし。バトルフェイズだけでなく、メインフェイズ1までもスキップされた場合、どうなるのだろうか。
結論から言うと、ターンプレイヤーは「ドローフェイズ」・「スタンバイフェイズ」・「エンドフェイズ」の三つしか行う事ができず、実質カードを引くだけでターンを相手に明け渡す事になる。
従って。もし相手の《メインフェイズ1》と《バトルフェイズ》を奪う事に特化したデッキが存在するならば――。それはルールを味方に付けるに等しい戦術なのである。
「相手のターンを無理やり終了させる、だとぉ!?」
恐らくは初めて目にするコンボだったのだろう。ソールが身を乗り出して声を荒げた。
相手の伏せカードでもモンスターでも無く、相手ターンそのものを狙った戦術。通常のデュエルではまず見かけないものだ。彼女が驚くのも当然だろう。
が、一度大会でその戦術を見ている姫利と百合は、落ち着いた様子でデュエルを眺めていた。
「あれが、フロム君の得意な戦い方よ。あのコンボ自体は結構前からあるんだけど、それに特化したデッキは、あの子のもの以外に見た事はないわね」
「うんうん、私も初めてあのコンボ食らったた時はちょービビッたよ。実際戦ってみるとわかるけど、あのコンボ、思ってる以上にフロむん側に有利なんだよねぇ」
冷静ではあるものの、二人とも彼のコンボに良い思い出が無いのだろう。苦笑いしながら、互いに顔を見合わせている。
「しかも、あの子のデッキはあのコンボを使う事を前提に組まれているから、クロン君以上に先が読めない。正直言って強いわよ、彼」
デュエル開始からまだ三ターンしか経っていないと言うのに、応援席では早くも不穏な空気が流れている。その空気を噛みしめながら、ソールはふと思い出した。同級生から聞いた彼の噂を。
(時間を操る決闘者……時間。くそ、そういう意味かよッ…!)
漸く情報の意味を理解するが、デュエルが始まってしまった今はどうする事もできない。
ソールは小さく舌打ちして、クロンの様子を伺った。
【クロン】 LP:8000
手札:4枚
モンスター:なし
魔法&罠:2枚
【フロム】 LP:8000
手札:4枚(一枚はスロゥ・ナイフス)
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