出会い
無意識について考えてみる。
まず、無意識の状態といえばどういった状態のものを指すだろうか。気を失っている時。物事への反射。他にあるだろうか。…………ともかく、この二つを例に挙げてみよう。
気を失っている時。即ち、気絶させられた場合や睡眠時。この時点では人に意識はない。よって無意識だ。そもそもこの場合における気、とは意識のことだ。言い換えれば「意識を失っている時」。「意識」が「無い」のだから、当然「無意識」になる。
次に物事への反射。これは主に自分の身を守るための機能だ。何かが起こった時、それを認識する前に行動を起こす。そして認識は、意識と同じ場所にあるものとすることができる。「認識」し、「意識」し、「記憶」する。人はこれを繰り返して物事を覚えていくのだから。この三つをここではセットAとする。そしてこの例における無意識は、この三つとは別の場所に位置するものだ。物事を認識する前に危険を感じた場合、それは「無意識」に「反応」し「行動」する、「反射」になる。これをセットBとする。このように「意識のある」セットAと「無意識」のセットBができる。「無意識」のセットBは「意識のある」セットAとは別のもの、別の場所に位置するものであることがわかる。
結論。「意識のない状態」、「意識とは別の場所」。この二つが無意識だ、とぼくは考える。要するに意識じゃないものが無意識だという話なのだが。
このことを前提に「無意識」で行動するということがどういうことか考えてみよう。…………これについては何よりも具体的な例がある。無意識を操る程度の能力を自称する友達がいるのだ。
彼女の名前は古明地こいし。年齢不詳、性別女性、身長体重乙女の秘密(本人談)、住所不明、過去不問、性格不定、紹介不能。
さて、いつの話をしようか。…………まずはぼくと彼女の出会った時の話をしよう。
※
ある事件のせいで某病院に長い間入院していたぼくは、今日ようやく退院できた。随分長かったように感じるし、いつもより短かったようにも感じる。よくある話だ。
久しぶりにお天道様の下を歩きながら、改装されたらしい我がアパートの向かう前に、小腹が空いたのでそれを埋めるために某ハンバーガーチェーン店にやってきた。何だか以前に来た時よりも客の数が妙に少ないような気がする。というかぼくを除けば零だ。時間帯のせいだろうか。とりあえずハンバーガー一つを注文。こちらでお召し上がり。奥の方で店の人が「久しぶりのお客様だ! 張り切っていくぞ!」とか何とか言ってるのが聞こえた。張り切るもなにも、別に手作りしてるわけじゃないだろうに……ひょっとして手作りに切り替えたのか? それが不評で客足が遠のいたとか? 失敗だったかな?
まあいいか。ぼくはよっぽどの料理でなければ食べられる系の人間だ。それにいつぞやのキムチ丼ご飯抜きよりは美味しくいただけるだろう。何でそんなキムチ丼に対する冒涜を行ったのかは覚えてないけど。あれは辛かった。
そんなことをボーッと考えていると「ヘイお待ちィ!」とハンバーガーが運ばれてきた。袋に入っているからわからないが、いつもと同じに見える。あ、飲み物を注文するのを忘れてた。いいや。肉汁も水分だ。…………違うな。うん。
適当な席に着いて、ハンバーガーを開封。見た目はいつもと変わらないな。もちろん以前のものを完璧に覚えてる自信はないので、そうと言い切れないのだが。それにこういうのは見た目を大きく変えるものじゃない。隠し味を少し入れる程度の変化だろう。ならば食べてみないことには始まらない。
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