ハーメルン
家賃1万円風呂共用幽霊付き駅まで縮地2回
Sleeping Beauty~後編~(幸せな生活は長く続かなかった。始まったのだ――異世界からの侵略が)

~3日目~

 タッツミーン! 皆元気? 俺は一之瀬辰巳。タツミン星からやってきたタツミン星人なんだ。タツミン星人はさびしくなると死んじゃう(死因:涙で溺死)から、恐らくは兎の祖先だと思われるよ! 主食はサバの味噌煮! 趣味はネットサーフィングとフィギュアの鑑賞! 服のチョイスは妹! 

 え? タツミン星人についてもっと知りたい?

 そうか……。
 そんなの俺が知りたいよ……何なんだよタツミン星人って……。何で大学最初のコンパで俺はウケ狙ってそんな自己紹介しちゃったんだよ……。結局周囲ドンドンビキビキで、遠藤寺しかウケてなかったよ……。お酒の力ってホント怖い。
 まあ、今思えばあの自己紹介が無ければ遠藤寺が俺に興味を持つこともなく、そうなったら俺は完全に絶対ナル孤独者だったわけだ。そう考えたらあのぶっ飛び自己紹介もよかったのかもしれない。

 なんで今遠藤寺のことを思い浮かべているかというと、今から遠藤寺に会いにいくからだ。
 会ってエリザの寝顔を見る為のいい知恵を頂こうと思っている。一休さんに縋りつく新右衛門さんの如く。

 そういうわけで俺は朝から大学にえっちらおっちら向かっていた。道中に妹である雪菜ちゃんにメールを送る。

『雪菜ちゃん……寝顔が見たいです』

 と。正直自分でも狂気の沙汰としか思えない。いくら連日失敗続きだからって無謀が過ぎる。女神が出る泉に身投げをするような暴挙。平気で大破進軍しちゃう恐ろしさ。女子校に全裸突撃する蛮行。
 だが遠藤寺に頼んでも失敗する可能性を考え、少しでも選択肢を増やしておきたかったのだ。備えあれば嬉しいし。

 送ってしまってからちょっと後悔していると、1分も経たずメールが返ってきた。

『寝顔がみたいですか? 普通なら恋人でも作ればいいとアドバイスをするところですが、兄さんは現在の輪廻の輪にいる限り恋愛とは無縁なのでこれは却下します』

 なに俺って現世どころか来世でも恋愛とは縁がないの? 

『であれば。さっくりそこら辺を歩いている女性を捕まえて監禁すればいいのでは? そうすればお縄につくまで好きなだけ寝顔を見ることができますよ。……いえ、よく考えると兄さんに監禁された時点で、兄さんの内面から溢れる下衆さを感じ取り普通の女性は自害しますねこれも却下です』

 兄を精神的に追い詰める妹がいる、これってトリビアになりませんか? そうですか、なりませんか。

『深夜の駅前にでも張ってみてはどうです? 運が良ければ酔いつぶれたOLの寝顔を見ることが……いえ、兄さんが深夜に出歩くだけでも即通報の可能性が……これも却下ですね』

 されるかされないかで言えばされるけどさぁ……でもさぁ……。

『と言うわけで兄さんが寝顔を見ることは不可能です。いえ、待ってくださいその縄を置いて下さい。ショックで命を絶つのはまだ少し早いです』

 しねーし。

『流石に寝顔を見られなかったなんて下らなすぎる理由で自殺した兄さんのお葬式に出るのは、それこそ死ぬほど嫌ですので、これで譲歩してください』

 と返ってきたメールには画像が添付されていた。
 開いてみる。

 何故か元俺の部屋にあるベッドで眠っている雪菜ちゃんの画像。
 ご丁寧に真上、真横、部屋の入り口からと様々な角度から撮っていた。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/10

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析