ハーメルン
家賃1万円風呂共用幽霊付き駅まで縮地2回
アニメイトまで……え? ……無い……だと

 俺が中学生の頃、こんなことがあった。
 夕方俺が部屋で漫画を読んでいると、着替えを持った小学生の妹が部屋に入ってきたこう言った。

「兄さん、お風呂が沸きました。冷めてしまうので、早く行きましょう」

 って。その頃、俺は普通に妹と一緒に風呂に入っていた。
 別にそれがおかしいとは思ってなかったし、いつまで一緒に入るもんなんなんだろうなぁとそう思っていた。その日までは。
 その日学校で、こんな会話を聞いたのだ。

 クラスメイトの女子達の会話だ。

『昨日さぁ、オヤジが一緒に風呂入ろうとか言ってさー』
『うわマジで! それキモ!』
『だしょー? つーか中学生にもなって一緒に入るわけないっつーの』
『小学生までよねー』
『そうそう。大体イケメンならともかく、オッサンの毛深くてダルンダルンの裸なんて見たくないっつーの』
『……ん、いや、毛深くてダルンダルダンの裸もさ、まー、ね。ほら……それはそれで味があるっていうか』
『え?』
『……』

 この会話を聞いて俺は思った。
 俺もいつか妹に『兄さんとお風呂に入るとか気持ち悪くて無理! 5万円貰っても無理!』なんて言われるかもしれない、と。
 だから言われる前に自分の方から断ることにしたのだ。

「今日は一人で入るわ。……つーか、今日からは別々に入ろうぜ」

「どうしてですか?」

「ほら俺もう中学生だし、お前ももう高学年だろ? なんつーか、お互いさ、なんていうか……なあ……分かるだろ?」

「……兄さんがそう言うなら、分かりました」

 妹はそう言って部屋から出て行った。
 ただその時何故か、妹は残念そうな顔を仄かに赤く染めていた。

 次の日、母親に『女の子の裸に興味を持つのはそういう歳だから仕方ない。でも小学生の妹の裸に興奮するとかお前マジ救えねーわ』とかどん引き顔で言われた。
 どうやら妹が母親に『兄さんが私に欲情して襲ってしまいそうなので、今日からは別々にお風呂に入るらしいです』と報告したらしい。
 この経験から伝えたいのは、事実ってやつは個人によって曲解されるってこと。
 本当に伝えたいことは、ちゃんと一から十までしっかり伝えなきゃいけないってこと。




■■■


 さて、4番目の選択肢である『そのまま幽霊の同居する』を選んだわけだが。
 俺と幽霊子(仮称)は部屋の中心にある食卓を挟んで向かい合っている。
 幽霊子は先ほど前のテンションの上がりっぷりはどこへやら、借りてきた猫のように大人しく座っている。

「一緒に住む上で、君に一緒に聞いておくべきことがある」

「……う、うん」

 少女は遂に来たか、そういった何かをこらえるかの様な顔で頷いた。
 そのまま胸の奥にあるとても辛いものを吐き出すかのように、口を開く。

「……うん。わたしが死んじゃった理由、それはね……」

「いや、それはどーでもいい」

「ええっ!?」

 少女はガクリとうなだれた。
 そりゃそうだろう。
 何が好きで他人の死因なんてものを聞かなければいけないんだよ。
 下手すりゃトラウマものだ。
 この世界が中学生の頃、俺が構想を練っていた漫画トラウマバーサス(トラウマを使い戦う漫画。トラウマ使いは相手に自らのトラウマを武器にして攻撃できるのだ! 我ながらなかなか面白い出来だったんだけど、登場人物の抱えるトラウマのネタが尽きて、俺自身のトラウマを使ったら、登場人物が……なんか全員死んだ。何を言ってるか分からないと思うが、俺も分からない……)だったら、喜んで聞くけどさ。

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