第十一話 美月の瞳と仲直り
◆
「霊視放射光過敏症…」
「うん、まあ詳しいことはググってもらえば分かると思うけど、サイオン?とかなんか普通の人には見えないものが色々見えるんだよね」
随分と適当な説明ではあるが霊視放射光過敏症については調べるまでもなくお兄様にお聞きすれば詳しく知ることができるだろう。お兄様に知らないことはないのだ。
「で、その霊視放射光過敏症を普段はコントロールしてるんだけど……たまにコントロールできなくなることがあるんだ。なんかより強く見えるようになるっていうか……言葉で説明するのは難しいんだけど、とにかく眼に慣れるまではコントロールできなくなる」
何故か両手にそれぞれ輪を作り双眼鏡をのぞくような動作をしながらそう説明する美月。美月のよく分からない言動は気にせず無視するよう言われているので特に何も言わない。
「うん、達也には後でゆっくりお話をするとして……ここからが本題なんだけど……ぼくはこの状態、霊視放射光過敏症の状態だと、人の心が読めるんだ。見える光の揺らぎや色で何となく分かっちゃうんだよ。普段だったら心を読むのだけをオフにすることも出来るんだけどね」
「心が……あっ…もしかしてそれで…」
「うん、心が読めちゃうからこの状態の時にはなるべく人に関わらないようにしているんだ。誰にだって知られたくない秘密とかあるだろうし……そのだからあのことも謝りに行けなくって……ぼく暴走しちゃったのに」
うう、美月の言葉に顔が赤くなっているのが分かる。
「そ、そのことならもういいわよ。美月も反省しているようだし……でも次は許さないわよ?」
「あ、ありがとう深雪さん!大好き!」
涙目で抱きついてくる美月はなんだか妹のように思えて可愛い。ついついなんでも許してしまいそうだ。
ただ、じっとこちらを睨んでくる方がいるのだけど、私が何かしたのだろうか。すごく綺麗な人だからか迫力があるので止めてほしい。
でも、少し安心した。
視界に入らないで、というのにはちゃんと理由があったようだ。
それにしても、心が読めるというのは随分と凄いことのように思えるのだけど……私との会話から本当に心が読めているようだし。
ただそうなると本当に美月との接触は避けた方が良さそうだ。もし美月に秘密を知られるようなことがあれば殺……おっと心を読めるのだった。
「ボクハナニモミエテナイヨー」
冷や汗を流しながら両目を手で覆い、片言でそんなことを言う美月。さっきのは冗談だが、もし本当に秘密……四葉のことを知られてしまったら美月がどうなるかは分からない。命を失うようなことにもなりかねないのだ。
「それじゃあ、美月、ちゃんとコントロールできるようになったら連絡してね」
「あっ明日からは眼鏡かけてくるから大丈夫だよ。前使った時、壊しちゃって。
しばらく使わないし放置してたんだけど、新しいのが今日届くんだ」
どうやら美月はオーラ・カット・コーティング・レンズという度の入っていない特殊な眼鏡を持っていたようで、それを使えばサイオンや光が見えなくなるらしい。しばらくはその眼鏡をかけつつ、眼をコントロールできるように調整をするようだ。もう何度か繰り返しているようで、あと一週間もあれば眼鏡は必要なくなるらしい。
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