第十八話 ウィンドウショッピング
ウィンドウショッピングというものの楽しさがぼくには全く分からない。
服が欲しかったらネットで頼めばその日のうちに届くし、わざわざ街を歩き回って欲しい服を探すより、ネットでちょちょいと検索して探した方が断然早いのだから。
大体ぼくは服なんて何でも良いし欲しくもない。サッカー部だったころは学校と家を往復する毎日で休日もほぼ部活で学校指定の物しか着ていなかった上、止めた今も基本ジャージで過ごす日々だ。絵を描くと、服が汚れるしね。
今日だって中学校に入学した時に買った適当なジャージだし、彼氏(笑)であるところの達也も「丁度良いな」と褒めてくれた。
ならそれで良いじゃない。
ぼくが着飾る意味もなければ、意思もないんだから。
と、思っていた時期がぼくにもありました。
「可愛い!可愛いよ!食べちゃいたいくらいだよ!」
「なんで、アタシが、こいつの係りなんだ!」
「一応、美月も女子だからな」
ウィンドウショッピング、最高だよ!
着飾った深雪さんを眺めながら、何故かぼくを羽交い締めにしている薫の胸の感触を背中で楽しむ。うむ、なんて素晴らしい!
ただ達也、お前それが彼氏(爆)の台詞か!一応ってなんだ!その通りだけど!
「お兄様、身の危険を感じますっ」
「大丈夫だ、俺が守る」
「守ってるのアタシだけどな!」
試着室のカーテンで身を隠しながら震える深雪(可愛い)が、格好つける達也(爆発しろ)の台詞に照れている(可愛い)が、ぼくを押さえているのは薫(柔らかい)である。つまり達也は何もしていない。なのに深雪の達也への評価が勝手に上がっていく。マジもげろ。
それにしても薫よ、少し大きくなったな。ぼくは嬉しいぞ。
「おい、達也!こいつアタシにまでセクハラしてくるぞ!代われ!」
「悪いな薫、お前が犠牲になることで深雪は守られる。全て計画通りだ」
「流石です、お兄様!」
「流石ですねぇ!悪魔様!」
深雪のブラコンはもう駄目かもしれない。
でもあえて言おう。流石です彼氏様!本当にありがとうございます。ぼくのことを知り尽くしたかのような見事な策!なかなか素晴らしいじゃないか。褒めてつかわす。
そんなことを考えながら、着飾った深雪を舐め回すように(むしろ舐めたい)観察し、幸せに浸っていると何故か突然、悪寒が走った。
「……深雪のファッションショーに、薫の犠牲……これで後二週間は魔法漬けにしても耐えられるだろう」
ぼくはとりあえず、考えることを放棄して、今を楽しむことにした。
幸せタイムはまだまだこれからなのだ!
◆
朝早くから集合して訓練をさせられ不満たらたらのぼくだったが、神社に来たのは別に達也の稽古のためでなく薫と合流するためだった、というのだから全然オッケーだ。
ぼくはてっきり、深雪を餌にぼくに修行させるのが目的だったんじゃないかと達也を疑っていたけど、うむ、達也はやるときはやる男だったようだ。
薫と合流した後、ちゃんとぼくのご褒美デート?が始まった。
やって来たのは都心のショッピングタワーだ。
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