第二話 勝負
普段、ぼくの通う中学校では2クラス合同で体育を行っているのだが今日は珍しく3クラスで合同になった。つまり、A、B、C組の3クラスである。
ぼくはこれを運命だと思った。
いつもはD組と合同で達也と体育の授業を受けることはないが、友達になったその日にこうしてテストでの雪辱を晴らすチャンスが与えられたのだから。
「達也!サッカーで一対一の勝負だ!」
「遠慮させてもらう」
が、達也に勝負を持ちかけてみればあいつはあっさりと拒否しやがった!
「体育は原則、男女別だ。そして今日の授業は男子がバスケ、女子がバレー、サッカーは授業時間内にやるスポーツとして適切ではない。よってその勝負は受けられない」
「な、なら放課後に勝負しよう!それなら何も問題ないはずだ」
正論で口撃されると反撃は不可能。ぼくは仕方なく放課後に勝負をするよう変更する。まさか逃げないよな、という感じの顔をするのも忘れない。
「はぁ……断ったら断ったで何時までも付きまとってきそうだからな、仕方ない……一回だけだぞ?」
「わーい!ありがとう達也!」
ふふふ、テストの雪辱、晴らさせてもらう!
◆
「おっぱいのせいだぁぁああああー!!」
大得意のサッカーで僅差とはいえ達也に敗北したぼくの叫びが放課後の校庭にこだました。一体何事かと、周囲の生徒の視線が集まっているのが分かる。
「美月、女の子がなんてことを叫んでいるの!」
「だって、重いんだもん。これのせいで負けたんだもん」
ぼくの胸は中学校に上がってからというものの、急激に成長を続け、今や小ぶりなメロンくらいのサイズになっていた。走るのに邪魔だし、重いし、肩凝るし、最悪である。
「男女の差があるんだ、自分で言うのも何だが男でも俺より動ける奴はそういない」
「ううぅぅっ!その余裕がムカつく!」
流石に汗一つかいていない、というわけではないが呼吸はほとんど乱れていない。まさかこの男、サイボーグだとでも言うんだろうか。
「だったら触ってみろ!本当に重いんだから!」
「そんなの無理に決まって……っ!?」
ぼくは涙目で達也の手を掴んで自分の胸に押し付けた。むにゅり、と潰れる胸。ふふん、どうだ、これでぼくがどれだけのハンデを背負っていたか分かっただろ!
「み、みみみみ美月!あああ貴女は何てことをっ!」
「どした深雪さん?顔赤いし……ってあれ?なんか寒い?…寒っ!えっいやいや今六月ですけどっ!?」
何故か急激に下がる気温。
夏場のはずなのに、まるで極寒の吹雪の中にいるように痛いくらいの凍てつく冷たさ。
「深雪っ!」
ぼくの胸に手を押し付けられたまま固まっていた達也が、物凄い勢いでぼくから離れ、深雪さんに抱きついた。おお!今度はちっぱいの感触も確かめるというのか!そのためなら妹すら餌食にする、なんという鬼畜!流石です達也さん!
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