第三十六話 学校見学
昨日はなんとか達也に迎えに来てもらって帰ることが出来たけど、深雪に怒られてしまった。
お兄様の手をこんなことで煩わせるなって言われても、帰れないのだから仕方がない。
ぼくだって半年もすれば一人で帰れるようになるから!
「愛梨おはよう!」
一高の生徒が利用する駅は『第一高校前』という安直な名前の駅で、その駅から学校まではほぼ一本道。
その一本道に、とても目立つ金色を見つけた。
「おはよう、美月。随分早めにきたつもりだったのだけど」
九重八雲先生のところに行くという達也と深雪に駅まで送ってもらったから、結構早めの登校となった。
駅から学校までは一本道だからいくらぼくでも迷わないしね、たぶん。
そうして、かなり早めに登校したぼくたちは、B組に到着したものの、教室には誰もおらず、一番乗りだった。
まあ、始業の一時間半前だから当然だ。
ここに来るまで、愛梨以外の一高生を見かけなかったしね。
「そういえば、愛梨はなんでこんなに早く学校に?ぼくは朝寄るところがあったから学校来るのが早くなっただけだけど」
正確には、寄るところがあったのは達也たちで、ぼくは送ってもらっただけなのだけど。
ぼくも一応、八雲先生の弟子ってことになるんだろうけど、今日はパスした。暑苦しいというか、男臭いというか、最初の苦手意識が先行して、良いイメージが湧かない。
深雪と一緒、ということで悩みはしたのだけど、行ったら行ったで、鍛練させられそうだったから止めておいた。
「……目覚ましが一時間ずれていたのよ」
顔を紅くして小さな声で呟いた愛梨は、そそくさと自分の席に座ってデスクに突っ伏した。顔を隠しても耳が紅いのは丸見えである。可愛い。
「もしかして愛梨って結構おっちょこちょい?」
「ひ、一人暮らしに慣れていないだけよ!」
愛梨の台詞に説得力はあまりなく、ぼくの中で愛梨には、ドジっ娘属性が追加されたのであった。
「おっはよー!」
始業の十数分前、朝からハイテンション、天真爛漫な笑顔を振り撒きながら教室に入ってきたのはエイミィだった。
エイミィの挨拶に、おはよう、という好意的な挨拶が教室の所々から返ってくるのは、彼女の人柄だろう。あんな可愛い挨拶をスルーすることなんて出来やしない。なんなら抱き締めたいくらいだ。
「おはよう、エイミィ。早速なんだけど、愛梨が面白いんだよ。今日の朝ね……」
「ちょっと美月!」
「えっ何々?聞きたい聞きたい!」
そうしてぼくは、エイミィに愛梨の失態を暴露し、愛梨が再びデスクに突っ伏して同化した。
あはははっ~、愛梨ちょっと天然なんだねー、とエイミィに背をポンポンされ、愛梨の羞恥メーターが振りきったのか、オリエンテーションが始まるまで、愛梨は突っ伏して悶えていた。
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