2#09
* * *
葉山先輩が奉仕部の部室を去った後、少しだけ時間をおいてからわたしは校外清掃に参加した。
だが、なぜかお咎めがなかったこと、そしてどういうわけか、雪ノ下先輩や結衣先輩も校外清掃に参加していたことが気になった。
葉山先輩が言うには、奉仕部の三人は、平塚先生に呼ばれていたとのこと。
けどあの時、平塚先生は二人に言うつもりはないと言っていた。
……となると、せんぱいが何か言ったのだろうか。
わたしには考えてもわからなかったので、黙々と清掃に勤しむ。あまり広くはない範囲だが、学校周りの清掃を終えたところで校舎から平塚先生がわたしのほうへ歩いてきたので声をかける。
「あっ、先生……。その……遅れてすいませんでした」
「それはいい。ただし、サボった分ちゃんとやっているだろうな?」
「先生までわたしのことなんだと思ってるんですかね……」
「冗談だ」
ちょっぴりむくれるわたしの様子を見て、平塚先生はくすくすと笑った。
「……それに、やむを得ない理由があったことくらい、見ればわかるさ」
「……ありがとうございます。あの、先生。……聞いてもいいですか?」
「ん? 雪ノ下と由比ヶ浜のことかね?」
わたしが抱いた疑問を見透かしたように平塚先生は答える。
「はい」
「私は何も言ってはいないよ。私は……な。気になるなら聞いてみたらいい」
となると、やっぱりせんぱいかなぁ。
「それと、もうじき最終下校時刻になる。今日は終わりにしたまえ」
そう告げて手をひらひら振りながら平塚先生は戻っていった。わたしはその姿を見送った後、今日の校外清掃は終了だと言うことを全員に伝えた。
各々が帰り支度をするために校舎へ戻っていく中、わたしもそれに続くと、後ろに気配があることに気づく。
「一色さん」
「雪ノ下先輩? どうしたんですかー?」
「少しあなたに話があるのだけれど、いいかしら?」
「わたしに、ですか?」
「ええ」
「わかりましたー……。あっ、それって時間かかる感じですかね? だったら先に鞄とか取りに行きたいんですけど、いいですかー?」
「そうね……。ではもう一度、ここでいいかしら?」
「そうですねー」
わたしはそこで一度雪ノ下先輩と別れた後、鞄はクラスに置きっぱなしだったことを思い出して超特急で戻った。正直、いたずらの一つでもされてるんじゃないかと心配になり確認したが、鞄にそういった形跡はなかった。
そうして別れた場所に再び超特急で戻ると、雪ノ下先輩はわたしより早く戻ってきようで、わたしを待っていた。
「すいません、お待たせしちゃいましたかー」
「いえ、私も今来たところだから大丈夫」
雪ノ下先輩、その返しはいろは的にポイント高いですよ! どっかの誰かさんは「マジ待った」とかふざけたことぬかしましたからね!
「では、行きましょうか」
* * *
わたしと雪ノ下先輩が話をするためにやってきたのはカラオケだった。
当初こそ不審に思ったが、よくよく考えれば『邪魔が入らない』ということ。そして『わたしにとっても今は都合がいい』という点で、これ以上適した場所は思いつかなかった。
ただ、お金がかかってしまうという点だけが不満ではあったものの、「付き合ってもらっているのは私なのだから、料金については気にしなくていいわ」という雪ノ下先輩の言葉に甘えさせてもらい、不満は解消した。
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