ハーメルン
英雄になりたいと少年は思った
ランクアップ1→2

「発展アビリティについてなんやけども、よう頑張ったみたいやな。候補は3つも上がったで」
「それは目出度いことだな。良い発展アビリティがあると、私としては訓練を施した甲斐があったというものなのだが……」

 リヴェリアには狙っていた発展アビリティがあった。神々が地上に降りてきてからこっち、発展アビリティの解析については、研究が進んでいる。達成度を別にすれば、概ねこういう行動をすればこの発展アビリティが発現する『だろう』ことは、いくらか解っていた。

 その内の一つが『狩人』である。この発展アビリティは短期間の内に大量のモンスターを撃破することで得られるもので、その効果は一度経験値を得たモンスターと戦った時、アビリティが強化されるというものだ。これはレベル2へのランクアップの時にしか発現しないとされ、アイズも習得したものである。

 達成が比較的困難であるが、基本、新規のモンスターと戦うよりは戦った経験のあるモンスターと戦う機会が多いことから、生存率を高めるためにと冒険者だけでなく神々にも人気の高いアビリティである。

 一日のノルマを決め、ベルには沢山のモンスターと戦わせた。なるべく多く、なるべく沢山のモンスターと戦わせたのだから、これで発現していなければお手上げなのだが、さて、どうなることか。

「その3つな、一つはリヴェリアのお目当ての『狩人』や。これはこれで人気が高いんやで? お次が『耐異常』でな。これは読んで字の如く状態異常をある程度遮断してくれる便利なもんや。で、もう一つが肝心なんやけども……うちは結構長いこと神様やっててな。ステイタスの更新もそれなりにこなしてるんやけども、この発展アビリティは初めてみるなー」

 ロキがさらさらと羊皮紙に書き上げたのは、発現した発展アビリティの3つの名前である。『狩人』『耐異常』と、もう一つは『幸運』とあった。これにはリヴェリアもレフィーヤも首を捻る。聞いたことがない上に、字面から感じられる印象が非常に漠然としており、正確な効果が想像しにくかったからだ。

「……運が良くなるということか?」
「それは間違いないと思うけどな、問題はどの辺りまで良くなるかっちゅーことやな」

 最高は勿論、ダンジョン外も含めたこれからのベルの人生全ての場合において幸運になるということであるが、流石にそれは高望みし過ぎだろうと、ベル以外の全員が思った。それに比較すれば、効果は大分限定されることは想像に難くない。ダンジョン内においてレアドロップアイテムが入手し易くなるとか、ランクアップ時に良い発展アビリティが出やすくなるとか、そんな所であると推察される。

 レアリティ相当の効果はあるだろうが、戦闘力やダンジョンでの生存率の向上は見込めない。ベルの安全を考えるならば、狩人や耐異常の方が良いのは言うまでもないが、レアというのは魅力的だった。

「ここで決を採っても良いが……やはり考える時間は必要ではないかな」
「せやかて、情報収集の成果は見込めないで? うちが知らんということはギルドにも記録はないやろうし、仮に知っている神がいたとしても、それを聞いて回るのは無理や」

 既に、レベル1のベルがミノタウロスを単独撃破したことはオラリオ中に知れ回っており、ランクアップが近いことも当然、知られている。レアな発展アビリティの情報をロキやファミリアの幹部が嗅ぎまわっていたらそれだけで、ベルにそういうレアな発展アビリティが発現した、あるいはその可能性があると看破されてしまう。

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