ハーメルン
チートな剣とダンジョンへ行こう
蛇足06話「復讐するは彼にあり」

 公都セルニアに到着して三日が経った。
 未だ目的の上級ダンジョン――ウェルミス監獄に挑戦できずいる。

 ウェルミス監獄が冒険者ギルドの管轄にないためだ。
 一年前ほどに管理がギルドからセルニアに移ったらしい。
 そのため、セルニア公都の関係者以外立ち入り禁止である。

 監獄という名のとおり罪人を押し込めておく場として使われていると聞く。
 ぼろ衣と錆びた剣、灯りに食料少々を持たされての投獄らしい。
 入り口も閉じるため、実質は死刑と変わりない。

 管理権限がギルドにないダンジョンというのはかなり珍しい。
 そんな訳でかどうかは知らないが、冒険者の間でもたびたび噂が聞こえてくる。
 ネクタリスでも、土木作業に勤しんでいると近くにいた奴らがぺちゃくちゃ話しているのを聞いた。
 だいたい一人でいるから、他人の会話がよく耳に入るのだ。
 話を聞いた瞬間、私は強い想いに駆られた。
 絶対に挑まなくてはならない――と。

『なんか自虐が聞こえた気がした……』

 思い立ったら即行動。
 シュウに聞けば、『子爵に推薦状をしたためてもらえ』と話す。
 ぼんやりお茶を飲んでいたところに押し入って、速やかに一筆書いて頂いた。
 念のため、ネクタリスのギルド支配人の推薦状も手に入れている。
 セルニアの冒険者ギルドの支配人からも推薦状をもらった。
 一昨日、セルニア側に書状諸々を提出した。



 二日ほどセルニアの都をぶらついていた。
 先ほどようやく宿に迎えが来て、ものものしい建物に連れて行かれた。
 その一室に案内され、お偉いさんの前に立っている。

「極限冒険者メル。ウェルミス監獄の入場を許可する」

 整った髭を弄りながら初老の男は告げた。
 どうやら許可はあっさり下りたようだ。

「明日の朝、鐘二つ頃に宿の前で待て。こちらの用意した馬車で送ることになる」

 明日か。
 今からでもよかったんだが、さすがに無理か。

「諸注意をあげる。まず第一点。携行は武具一式。それに袋一つとその内容品まで許可する」

 おっと、思ったよりも譲歩してもらえている。
 最悪、剣一本の持ち込みしか不可かと思っていたがかなり緩い。

 やはり塩の効果だろうか……。
 セルニア側にはネクタリスで手に入れた塩も贈っておいた。
 アヴァール公爵が食通で、ネクタリスの天日塩を好んでいると噂で聞いたためだ。
 近頃は海が荒れていたせいか、塩は金を払っても手に入りづらくなっており良い献上品になる。
 推薦状だけじゃ甘いかもと、シュウの助言を受けて手に入れておいた。

 塩を手に入れるのは大変だった。
 本当に数が少なく、どこへ行っても売ってない。
 馬鹿はソルトアウトだか言って笑っていたが、なにがおもしろいのかよくわからない。
 もう諦めようかと思ったとき。たまたま声をかけてきた商人に、「塩があるか」と尋ねたところ持っていたため売ってもらった。
 ちなみに全部はもったいないので半分は手元に残している。
 味付けに便利なのだ。

「二点目。監獄への入場を確認次第、入り口を閉鎖する。正確には後戻りを禁ずる」

 これは仕方ない。

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