ハーメルン
チートな剣とダンジョンへ行こう
第06話「成長止まぬゼバルダ大木 後半」

 蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛。
 見渡す限りに蠢く大量の蜘蛛。
 牙を鳴らし、毛深い足を忙しく動かす蜘蛛。
 勢いよく糸を吐き、動きを鈍らせてくる蜘蛛。

 そんな蜘蛛たちがアイラの魔法で一掃された。

「フハハ。見てください。蜘蛛どもがゴミのようです!」
『溜まってたものが出尽くしてスッキリ! もう空っぽで何も出ないよぉ。アイラたん、また今度もよろしくね』

 一人と一振りの叫びが響き渡る。
 頭痛に効く薬をあとで煎じてもらおう。



 ゼバルダの大木。
 中級ダンジョンのなんだかヤモリなボスを一撃で屠った私たち。
 その勢いは止まることを知らず、一気に上級へと踏み込んだ。

 されど今日はもういい時間だ。軽く見るだけ。
 本格的な攻略は明日から。
 今までも軽く見るだけのつもりでボスまで行ってしまったことが二回あった。
 しかし、今回は本当に見るだけにとどめる。

 ――はずだった。
 まあ、なんとなくそうなるんじゃないかとは思っていた。
 意味はなく必要もない言い訳になるが、ソロなら見るだけになったはずだ。

 ダンジョンの傾向は下の中級とさして変わらない。
 敵の種類が変わっただけだ。
 中級で要注意だった蜘蛛が上級ではメインとなり、その数が圧倒的に増えた。
 数、耐久力、糸による拘束とかなり面倒だ。
 私は耐性があるため気にならないが、糸と牙に毒と麻痺も兼ね備えている。

 攻撃も糸が絡んだところを見計らってしてくる上に、一体ではまず襲いかかってこない。
 緻密に私たちを取り囲み、自分たちの狩り場に誘い込んでから仕掛けてくる。
 蜘蛛は私が思っているよりも賢い生き物だったようだ。

『まじめな話。メル姐さんよりも蜘蛛の方がずっと賢、い、ヒィ、ヒャァー!』

 蜘蛛の糸で刀身をぐるぐる巻いてやると、シュウは金切り声をあげて喜んでくれた。
 そんなに喜んでくれると私も嬉しい。
 もっとしてやろう。

 話を戻そう。
 蜘蛛たちはその賢さが仇となった。
 私たちを取り囲んだところで、アイラの一時停止していた魔法が炸裂した。
 先のボス戦で見せてもらった炎の魔法が私たちを中心にして放たれた。

『二千エックス年。世界は魔法の炎に包まれた! 蜘蛛の糸は溶け、糸を吐き出した蜘蛛どもは蒸発し、あらゆる生命体は殲滅されたかに見えた。しかし、ぼっちとヒッキーは死滅していなかった!』

 そんな私たちに力を与えたチートが全部悪い。

『――などと供述しており、彼女たちの責任能力を疑問視する声も上がっています。なお、厚○労○省はこのような現状を重く見て。ヒッキーに対しては、先日から行われている家庭からの追放を中心とした――ブートアウト型の支援をより強化していくと本日の会見で発表しました。一方、ぼっちに対しては未だ対応が検討すらなされておらず。本人の自発的な意志が欠けていると言うにとどめています。この問題について専門家の意見を伺うため、本日はぼっちの第一人者であり自称冒険者のメルさんにお越し頂いています。さっそくですが、メルさん。この問題をいったいどのようにお考えでしょうか?』

 ――クソ喰らえだ。

 蜘蛛たちはもはや糸一本さえ残っていない。

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