第08話「ナギム廃坑を越えて一人」
ガンムルグの町。
フランデナ草原の南に位置するその町は、職人の町として有名である。
東に位置するガンムルグ山により鉱物・水・木と多大な恩恵を受けている。
手先の器用なドワーフが多く暮らし、様々な武器・防具・装飾品を製作している。
町から東に向かい、ガンムルグ山を越えると私の故郷であるエルメルの町にたどり着く。
山道は急峻なうえ標高もある。山越えは至難を極める。
昔は坑道が掘られており、そこをたどれば越えることもできていた。
しかし、坑道がダンジョンとなり廃坑となってしまった。
この廃坑は上級ダンジョン――ナギム廃坑と呼ばれている。
ナギム廃坑の誕生と同時に、エルメルの町へと続く比較的安全な道は閉ざされた。
当初の計画としてはゼバルダ大木、フランデナ草原、ナギム廃坑を回って家に帰る予定であった。
ところがだ。
ゼバルダ大木で上級ダンジョン制覇の証を二つ手に入れてしまった。
さらにフランデナ草原でも無事にダンジョン制覇の証を手に入れた。
三つの上級をクリアしたことになり、超上級ダンジョンへの入場が可能だ。
そうなると廃坑を通る必要もない。
このまま南に進み超上級ダンジョンへ行こう。
――そう考えていたが、シュウは帰った方がいいと言い始めた。
たまには両親に顔を見せてやれと口やかましい。
帰れ帰れ、あまりにもうるさい。
そのため仕方なく。
本当に仕方なくいったん帰省することにした。
『そうだよね。俺がうるさいからだよね。そう言えばさ。宿で出されたイモのスープ。メル姐さんのお母さん――つまり、俺のお義母さんが作ってたスープに良く似てた気がするんだけど。まさか、ママの味が恋しくなったなんてことはないよね。ふるさとは遠くにあって思うもの、だよ』
……お前。
ほんとにちょっと鋭すぎないか。
斬れば斬るほど鋭くなるなんて聞いてないぞ。
あと私の母は、お前のお義母さんでは断じてない。
ガンムルグの町は今日で四日目。
場所はガルム武具店。
新しい靴を受け取りに来ている。
靴が傷んできていたため、到着一日目でこの店に製作の依頼を出した。
せっかくのガンムルグの町。
何か作ってもらってもいいだろう。
そう思って目についた近くの店に入った。
モンスターのドロップアイテムを売ってお金も貯まっている。
あとで聞いた話になるのだが……。
このガルム武具店はガンムルグの町でも一、二を争う武具店だったらしい。
口元を厚く覆う髭が特徴的なドワーフ――ガルムが店主をしている。
ガルムは貴族の装飾品から一流冒険者の武具までなんでも作る。
製作依頼料は当然べらぼうに高い。
そのうえ、気に入らない仕事は受けないというこだわりもあるようだ。
どうしてそんな人物が私の依頼を受けたか。
答は簡単にして単純。
シュウだ。
まるで私の話を聞いていなかったガルムは、シュウをチラ見すると視線を縫い付けられたように動かなくなった。
その後、シュウを渡してやるとぽつりぽつりと口を開いた。
シュウが喋ってもガルムに驚きは皆無。
持ち主の技量のなさ、今まで攻略してきたダンジョンをシュウが語り始め。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/10
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク