05.ミソッカス魔力の無限容量ゴミ箱
昔々、一児の母は魔導工学の研究開発者であったそうな。
その母は『新型の大型魔力駆動炉開発』の設計主任に任命される。だが、問題の多い前任者からの引継ぎ、上層部の勝手で厳しくなるスケジュール。必然的に上層部に嫌気が差しやめていくチームスタッフたちの事後処理に追いたてられる日々だった。
そしてその母の人生を狂わせる決定的な出来事が起きた。上層部が自分達の都合で出した決定の末に行われた実験により『駆動炉の暴走・エネルギー漏れ』が起こってしまう。ただ母を含むスタッフたちは結界に守られ無事助かった。スタッフたちは、である。
――それだけならば、よかったのだ。それだけならば。しかし、その日に母の娘アリシアがその施設に来ており事故当時――結界の外にいたのだ。結果、アリシアは事実上の死に至り母は奇跡を求めた。なまじ天才であるだけ願い求めるだけでなく己で探し求めた。
狂ったかのように娘を生き返らせる方法を探し求めた。そのうちのひとつの方法、記憶を転写したクローンによる蘇生でない別の方法を試み上手くいかなかったこともある。
そして今、ようやく辿り着いた方法が、願いを叶えるロストロギア『ジュエルシード』を応用した蘇生である。
だからプレシアたちはジュエルシードを集めている。
「ってまとめれば、こんなとこね。ただ昔々ってほど昔々じゃないわ」
「……これ、ポッとでの俺が聞いていいような話じゃないなぁ。聞かされたとはいえ、気軽に聞いてしまって気が重い」
「そうよ、だから口外したら今度こそ殺してしまうかもしれないわ」
「するわけない、人様の身内事情なんて言いふらして何が楽しいんだか。で、これだけ話してお願いって何?」
「蘇生には、貴方みたいに活きの良い生きた人間の心臓が――」
「助けてくれぇぇぇぇぇ!」
「冗談よ」
出会い頭で魔法ぶっぱなしてきた人間がいうと冗談に聞こえんからやめて欲しい……で、ホントのとこは? 心臓じゃなくて脳がいるとか言うなよな、今度こそチビるからな!
「あなたのレアスキル、四次元空間の力を借りたいの。報酬を求めるなら可能な限り支払うわ」
「いいよ、三食寝床つきで引き受けた」
「安っ、早っ!? 母さん詳細なにもまだ話してないよ!?」
「あれだけの話を聞かされて断るなんてこと道徳の塊と噂されてる俺には無理だった……という表向きな理由は取っ払って飯と寝床が死活問題。イエス、ギブ&テイク! あと四次元空間くらいなんに使ってもいいよ」
「無欲……なわけではないわね、顔に真剣に死活問題って出てるし。ま、あなた人の良さそうな幸薄い顔してるから断らないとは思ってたけれど」
「幸薄いの言わなくてよくない?」
たしかに、ないない尽くしで転生して一回たぶん死んで色々幸薄い感じするけどさ。
して、手伝いってなにするんだろう。四次元空間なんて物仕舞うくらいしか出来ないんだけど、まさかそれだけであそこまで話さないだろう。
「ナナシ、あなた暴走しかけていたジュエルシードを四次元空間に放り込んでいたでしょう?」
「え、ああ、熱かったんで。まずかった?」
「……理由は何でもいいわ。あれ、封印せずにそのままにしてたら小規模次元震――軽く世界ひとつ滅亡する爆発が起きていたわ」
「危うく死ぬとこだった……!」
あ、いや一回死んでるな。やっぱアレは死んでたのか……
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