ハーメルン
GAMERA-ガメラ-/シンフォギアの守護者~The Guardian of Symphogear~
#9 - 休日の追想


 九死に一生を得た親友が、戦地へと走っていく姿を、ただ見ていることしかできない……そんな現実を、未来に味あわせたくはない。

 間違いなく……このままガングニールの装者として戦わせたら、二年前の災厄の時以上に、立花響って女の子の人生を、狂わせてしまう。

 だけど、どうすればいい………止めろと言われて、大人しく引き下がる子じゃないってのは、あの夜痛いほど思い知った。

 それに結局、この自分のエゴを押し通そうとするなら、響は無論、翼からも〝剣〟を奪わなければならない、そうしてまた〝独り〟で戦おうなどとすれば、かつての自分と同じ過ちを繰り返してしまうだけだ。
 自分一人で、背負って戦えるほど、あの地獄は甘くはない。
 でも、このままってわけにもいかない。

「上がろう……」

 私は湯船から上がり、脱衣所へと向かおうとした矢先、左腕の〝腕時計型端末〟から着信音が響いた。
 これは二課から支給された、二千十年代後半の発売当初よりは普及し始めたスマートウォッチ型の通信機である。

「弦さん?」

 通信の送り主は弦さん――風鳴司令であった。
 丁度今から二課本部に向かうつもりだったので、向こうから連絡が来たのは幸い。
 今通信できる格好ではないので、もう少し待たせることになるけどもだ。




 ちなみに、もしこれがプライベートな電話であった場合、こうなる。

〝朱音君、今どうしている?〟
〝今って言われても、入浴中だけど〟
〝なっ――君も女の子だろう!? そんなはしたないことを口に――〟
〝あ~~れ? もしかして高校生のあられもない姿、想像しちゃった?〟
〝お……大人をからかうものじゃない!〟
〝うふふ、ごめん♪〟

 本人はてんで無自覚であるのだが、実は朱音は結構、小悪魔な一面を持っていたりする。




 どこかの西洋風の城の建物の中らしい広い部屋の中で、空間に浮かんだ立体モニターを、小柄で銀色の髪を生やした少女が目にしていた。

「なんて……奴だよ」

 モニターに映っていたのは、シンフォギア――ガメラを纏った朱音の戦闘の模様だった。
 適合者と言えど、シンフォギアを使いこなせるようになるまでどれだけの鍛錬と時間を費やすか、その少女は実感していただけに、たった二度の戦闘でギアの力を引き出し、アームドギアを三種も具現化させた装者に驚きを禁じ得ないでいる。

「でも……アタシの〝目的〟の為には、こいつとも――」

 あどけなさの残るその容貌の一部たる二つの瞳からは、悲壮さに溢れた決意と言うものが抱えられているのであった。

つづく。

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