ハーメルン
GAMERA-ガメラ-/シンフォギアの守護者~The Guardian of Symphogear~
#4 ⁻ 特機二課
ノイズとの戦場となったコンビナートは、特異災害対策機動部によって完全封鎖されていた。
現場周辺は〝立入禁止〟と銘打たれた万能板が張り巡らされ、機関銃を肩に掛けた地上の自衛隊員と、空中を飛び回るヘリコプターが厳重に見張っている為、蟻一匹這い出る隙間もない、ましてや民間人が勝手に入り込めるわけもない。
内部では炭素化したノイズの残骸たちを特殊な吸引機で回収等、事後処理が迅速に行われている。
特機部とそれに関わる者たちの作業を目にしながら、朱音と響はコンテナを椅子代わりに腰を下ろしていた。
「あの――」
直にノイズとシンフォギア装者――つまり私たちと戦いの後始末に尽力している人々の姿をまざまざ見ていた私と響に、紺色な特機部の制服を着ているお方が、こちらに声を掛けてきた。
ショートヘアで、真面目さと知的さと気丈さ、それでいて懐の深さも合わさった雰囲気のある二十代の女性、後から聞いたんだけど、この特機に勤めているらしいお方の名前は――〝友里あおい〟と言う。見たところオペレーター……でも現場に率先して出られるだけの胆力も技量も持っていそうだ。
「あったかいもの、どうぞ」
両手には煙を上げるホットココアの紙コップがそれぞれ握られており、それらを私たちに手渡してくれた。
手慣れた様子を見るに、ノイズ災害が起こる度、生き残った人たちにこうして元気づける形で飲み物を提供しているのだろう。
「あ、あったかいもの、どうもです」
「ありがとうございます」
温かなお心遣いに、ありがたくホットを頂いた私たち。
響は両手で紙コップを持ちながら、ふーふーと熱を和らげながら口に入れ、その姿にちょっと微笑ましさを覚えながら私もココアの熱と甘味を味わう。
この女の子が〝背負ってしまった〟ものに、色々思うところはある……今でも、正直嘆きたくなる気持ちになり、胸の奥に重しと圧迫感がのしかかってくる。
とても、争い事には向いていない……それどころか忌避しているきらいさえあり、そして〝ノイズの災厄〟と〝人の悪意〟を味あわされたこの子に……なぜ〝戦う力〟が宿ってしまったのか、それも何の準備も覚悟も、決断する間すら与えられずに放り込まれたと思うと、憂いずにはいられない。
会ってひと月の自分ですらこうなのだ………幼馴染の未来がもしこの現実を知ってしまったら。
一方で、同時に……今もこうして無事に生きていることが、素直に喜ばしい、その気持ちにも偽りはない。
「あ、あのさ……朱音ちゃん」
「何?」
その響が、どう言葉にしていいか悩んでいる様子で、私に話を振ってくる。
大体の内容は予想できるので、気長な気持ちで聞き手に徹した。
「〝シンフォギア〟……って言ってたよね、あの力のこと」
首を縦に振って頷く。
「あれって……何なのかな? 朱音ちゃんは――どこまで知っているの?」
疑念と不安がないまぜになっているまるまるとした瞳を伏せて投げてきた彼女質問そのものの中身は、予想こそできていたし、当たってはいたけど、いざ答えるとなると、非常に骨の折れる問いかけでもあった。
何しろ……私が手にした〝シンフォギア〟は、私自身の出生と言ったものらと、密接に繋がっているからだ。
しかも、α(はじめ)からΩ(おわり)までとなると、求められる分量が半端なく多い。
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